第1話 (三波side)調合金Z
――― 調合金 ―――
錬金術師の最終目標は調合によって金を作ることである。調合によって人口的に作られた金のことを自然界から採取精製される金と区別して
「行け!調合金Z!!」
事前の工程をすべて予定通り実施し、成功を確信して最後の仕上げの焼入れのために火属性魔術で火を放つ。
ドッカーン!と大爆発してしまった。なにがだめだったんだろう?
「もう諦めましょうよ、元素である金を調合で作れるなんて悪い冗談ですヨ。」
三波が言う。
「いや、あれだけ金目のモノを学術的に正しく扱ってる訳がない。銀や銅と化学的に類似した性質を持つわけないじゃないか。そうやって奴らは我々を騙して独占しているんだよ。」
「はいはい。教授の陰謀論には飽きました。そんなことより、金を効率的に集める手法を考えましょう」
「それは金融詐欺やネズミ講などのいわゆる『現代の錬金術』ではないだろうな?」
「そっちの金なら通帳に数字書くだけで銀行が何もないところから作ってますヨ。結晶の核というか触媒というか見せ金にちょっとばかしは必要ですけど。口座の数字がお金に変わるんだと信じ込ませればあとは口座残高のまま電信やレターで流通するもんなんですヨ。」
「キミは錬金科よりも経済学科行ったほうが良くないか?」
「こんなイロハのイを知ってるくらいで魑魅魍魎の跋扈する金融界という名の伏魔殿行って通用するとは思いませんヨ。何より実際の価値を生み出す仕事ではありませんし。」
「以前言ってた核種変換はどうしたんだ?」
「あ、アレですか。話にあげるだけで核爆弾の本当の製法バラしそうなんでテロ防止のためにやめました。」
「たしか、純度高めて位置を揃えて……」
「それは信じ込ませるために当局が作り上げた嘘の製法です。その方法を模索している限り絶対に作れませんし、それを作ろうとするために必要になる素材や実験道具を購入したところでアシが付くようになってます。」
「キミのほうが陰謀論のように見えるが…。」
「やってみたからわかるんです。あの方法では核連鎖反応は起こりませんでした。兵器は実験ではなくて100発100中で動作しなくては話になりません。つまりあの製法はこぼれ話含めて全部嘘です。」
やってみたんかい!
「そして、もしかしてこのことかとガソリンと空気の混合気を利用した化学的手法による整列を試してみたら引き当ててしまって……。うまく行ったときに危なくないように細切れにして反応させるためのエンジンに組み込んでの実験なので何とかなりましたが危うく町が吹っ飛ぶところでした。とりあえずこのエンジンを三波サイクルエンジンとして特許申請しました。」
危険回避するために技術情報を知らせるべきなのか、存在しない技術ということにして嘘情報流して置くべきなのか。三波のように実験したり別の作り方を考えつくバカには少なくとも後者の対応ではだめだ。
「で、
「それが、いろいろな物質で試してみたんですが、なにせ原子量の大きい素材なんでイヤな同位体ばっかり生成されて金らしきものもものすごく微量に生成されたようなんですがそれを集める方法がなかったので役に立たないただのゴミが出来たんですヨ。」
「つまり、キミが言ってた金を効率的に集める方法というのは?」
「金以外の物質から金を生成する技術の先に必要になるものです。でもこの方法で生成される金なんて微量も微量でそこら辺の土から集めたほうがよっぽど効率良いですヨ」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます