第2話 (残虐描写あり)(並木side)素材集め

 並木が素材集めに登山をしていると、賊に襲われている一行に遭遇した。


 乗り合い飛行魔道具が大破して横たわり、その周囲では賊が逃げ惑う人々を火炎放射器で「ヒャッハー!汚物は消毒だ!」と焼いている。人が目の前で燃えて崩れ落ちいく。オエェ。


 背中に火がついて命からがら逃げてきたおばさんがなんの脈絡もなく並木に向かってきて「この娘をよろしくお願いします」と赤ん坊を渡して来た。


 「ふむ……。こんなことをしに来たのではないのだが……。」


 ダイイングメッセージとともに赤ちゃんを押し付けられて並木は大変困惑した。

 錬金の徒である以上、火の始末、有害物質の中和は起きた瞬間すぐ対応できるようにポケットにそういったアイテムは常に持っている。

 スプレー型の小型消火器でおばさんの背中の火を消す。ひどい火傷だ。しかも事故ではなく人為的に点けられたものだ。

 一応応急措置もしておく。こちらは錬金の徒だからというわけでなくて素材集めで山に行く装備として持ち歩いている簡易救急箱の衛生用具と薬を使う。


「おばさん、起きられるか?」


「ひ、火は消えたんですか?」


「おっと、レディへの呼びかけはお姉さんだったな、失敬」


 話が噛み合っていない。並木は相手の一歩先を予想してから会話をするクセがあるのだが、想定と違う話をされると予め用意した次の一手が明後日の方向に行ってしまう。これは並木が明後日の回答をしたのではなく場が捻じ曲げられることで真っ直ぐの会話の流れが明後日の話のように見えるのである。これを超特殊相対性理論という。


「助けていただきありがとうございます。私はもうだめですが、この子だけはなんとか……」


「てめぇ、都合よすぎじゃねえか?なんでオレが見も知りもしねえ赤子を育てなきゃならねえんだ。」


「いや、施設の方に繋いでいただければと……」


また時空連続体の曲折が起こった。


「その程度の火傷じゃ死にはせん、入院中預かれるくらいの家族、親戚紹介してくれればそこに連れて行ってやるくらいのことはしてもいい。」


「ダメです!その子はともかく私のことはほっておいてください。」


なんか事情があるようだ。なんだろうと考えていると、賊の一味と思しき男の声が聞こえた。

「手を上げろ!その女を渡せ!」


 五人で登場した迷彩服の武人がいっせいに火炎放射器を向けてくる。これは盗賊といったチンピラなどではない……ガチの軍人だった。しかも、俺たち狙われてる?なぜ?

 いずれにしても四の五の言ってられる状況ではなさそうだ。


 何も持ってないことをわかるように両手を開き掌を相手に向けて胸の位置に上げる。


 「証拠を消す任務中だ、余計なことしてないでこいつらをまるまる焼け!」迷彩服の軍人の上官と思しき奴から号令がかかると火炎放射器からドバッと燃え盛る液体が放出された。


 並木は両手で胸の位置でも手を乳モミモミのように動かし魔法を発動する。


「反応停止!分解!静止!」


 火炎放射器から出た燃える液体の化学組成がわかった。並木はなるほど……と見入る。軍事機密だから実物にアクセスはできないし製法も秘匿されてるんだよね。このギリシア火ってヤツ。


 な、何を…!とたじろぐ軍人たち、しかし司令官はさすがは人の心を捨てた殺人マシーン。

「じゅ、銃を使え。任務を見失うな!」


 軍人たちが一斉に銃をとる。


 出来ればこの魔術は生身の人体に対しては使いたくなかったがやむを得ない。正当防衛だ。


もみもみもみもみ。


「分解!拡散!再結合!」


 人体など物質としては基本的に水だ。しかし水が分解再結合したら何が起こるのか…。


 銃を持っていた5人の腕が水素爆発して銃ごと吹き飛んだ。


「全身爆破してやってもよかったんだが……流石に人道的にまずいからな……。」


脅しを掛けて詳しい話を聞こうと思ったら、

「生き恥を晒すくらいなら……ここで果てる!」

と全員舌を噛んで自決した。血がどぴゅーと勢いよく大地を穢す。オェッ!

 

 「汚れちまった……。オレはひとごろしのクソッタレになっちまった。」


 いや、確かに並木は殺してないのだが、並木は人一倍情に厚いので妙に責任感を感じてしまった。


ーーー

この物語はフィクションです。実在の人物、団体、組織、事件等とはなんの関係もありません。

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