汚れちまった錬金術師

草加八幡次郎ボロ家@リア充爆発しろ

プロローグ 魔力測定


「受験生諸君には、この水晶玉に各自得意とする魔法を放って魔力を測定してもらう」


 試験官の魔術師が試験方法を説明している。試験内容、手法ともに特に不満はない。でも試験の順序が極めて不愉快だ。筆記で通ったものだけがこの試験を受けられるが、ここでは0とでも出ない限りよほどのことがない限り実施後、合格が告げられる。


 この午後試験の魔力測定では魔力が弱い平民が先に受験する。合格とされた平民たちが50歩100歩のショボい数値で一喜一憂しているところに、貴族の子弟たちが平民たちに格の違いを見せつけて、精神的に支配するための受験順序だ。実にいやらしい。そしてオレは平民組最後の受験番号だ。


 ともに受験する平民組の仲間は10、20という魔力値で次々合格している。ゼロでなければオッケーらしい。


「きっと大丈夫だよ。」平民組のみんなが励ましてくれる。もとより負ける気は無い。むしろここで如何に誰も傷つけることなく、この胸糞悪い悪意ある順番で実施する試験を台無しにしてやるかだ。


 試験の順番が回ってきた。


「もみもみ」


 両手を胸の高さにし、向かいにいる異性の胸を揉むような仕草をする。ここはあえて鼻の下長くしてエロいこと考えてるような表情を全面に押し出す。


 周囲の観衆が苦笑い、いやクスクス笑ってる声が聞こえる。いや、受験生連中はそれでいい。問題は教員どもまでが嘲笑してる事だ。俺たちゃ客だっつーの。


 もみもみを所定回数やったので、左右の掌から水晶に向けて同時にそれぞれから魔法を放つ。


「還元!再結晶!」


 魔力量測定の魔道具である水晶はみるみるうちに透明感を失い、ひと回り小さく鈍い光を放つ金属球になってしまった。


ざわっ!ざわっ!


「おい、今の何やったんだ?」教頭が怒り出す。


「還元魔術と再結晶魔術のコンボです。水晶から結合した酸素を取り除いて珪素だけにしまして、多結晶珪素になったのをできた横から再結晶化で単結晶にしました。」


「この魔道具はどれだけの魔力を受けても自身は影響を受けないはずなのだが……」


「そんな希ガスるだけですよ。水晶が二酸化珪素で出来ている以上、力を加えれば変質します。」


 それは魔術とは違うなにか別の力のようだが。


「では引き続き水を結合させてシリコーン樹脂にして……」


かつて水晶玉だったものを、シリコーン樹脂

でできたぷるるんっとしたおっぱいの模型に加工する。


 はじめに魔力を放った時の手の位置、手の動かし方、これをやるためだったのか?!とざわざわしている。


「もみもみ。うん。この感触だよ。教官も揉んでみなよ」


 作ったシリコーン製おっぱいフィギュアを両手でぷるんぷるん揉みながら相手にすすめる。


「器用な人……。」


「こいつ大物になるわ……。」


 貴族の子弟たちは測定水晶の破損(魔改造)により当日の受験が出来ず、あとから成績が書かれたプリントが平民組にも配られたが、目の前で見たわけじゃないので特に劣等感を植え付けられるってこともなく、配られた奴らお公家さんたちの沽券をかけた平民とはそもそもすべてが違うのだと言いたいだけのくだらないプリントは紙飛行機や鼻かみにされて誰も読みはしなかった。

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