朝、始まり。言葉がぼやけて、まだ。

木田りも

日常。

小説。 朝、始まり。言葉が、ぼやけて再来。まだ。





 遠くに見える「街」を見ながら、冷たい空気と会話をする。外が明るくなり、新たな朝がやってきたことを知る。何度も何度も朝を迎えて、いつもと同じような、しかしいつもとまた違う朝を迎えていることを世の中は知っている。世界は変わる、人も変わっていく。思考も思想も便利さも自由さも、昔あった良いことも悪いことも淘汰されていくみたいで、平均的にみんなが幸せになっていくような世界が、僕は少し嫌なのだ。いつまでも変わらない朝とか太陽とかそういったものを愛し始めているのには、嫌になりかけている世界に対しての抵抗な気がする。


 この世界に神様なんていない。あるのは当人の努力と運の結果。これまでの行いと過程その全てを顧みて、周りの人が見えないところで手助けをしていたり、手を差し伸べたいって思ってくれたから、思っている以上の力が出せるだけだ。人間は非常に、地道にコツコツと歩みを進めてきた。それを神様のおかげにしてしまうのはあまりにも謙虚が過ぎるだろう。僕は先人をとても尊敬する。その上で人間は、謙虚でありたいと思うのだろう。だから、神様という架空の存在を作り、信仰し信じるのだろう。朝の街に神様は存在しない。肌寒さと車のエンジン音だけだ。良いことも悪いことも同時に存在する。そんな世界が難しいことを考えなくて良いからとても好きなのだ。


 人と会話をしなくても済んでしまう世界が広がっている。しかしながら、常に人に監視されているような気にもなる。気にかけていないように見えながら常に周りに気にかけているような。SNSは、誰かを叩く者、擁護する者、新たな火種を生む者、「正義」にとらわれている者で溢れかえり、安心できる場所なんてないのだ。自宅のようなところで寝ていても、いつ何が起こるか分からない。今日が無事に終わるかなんてわからない。


 夢?、夢。小さい頃の夢。離れたところで顔を見ながらお話ができる夢。電気で車は動き、勝手に開くドア。叶うものが増えてきた。実現し、成功し、やがて次の新世界へ進むこともできるだろう。だからこそ、失いかけているもの、失くしてはいけないもの、たくさんあるだろう。「つながり」はそんな容易いものではない。「愛情」が生まれるのはアプリの上ではないはず。何より「言葉」は相手にダイレクトに思いを伝えるべきだ。


そんな、小難しいことを考えながら歩いていると、明るくなった街並みに、ラジオ体操の音が聞こえてきた。雪が積もった公園の一角。雪かきをして綺麗になった広場には、何人もの人が集まり、新しい朝を共に過ごしている。思うがままにラジオ体操をしている。様子を見ていると参加しないか?と声をかけられ、共に体を動かした。小学生以来だった。こんな風に体を動かして、伸ばして、ジャンプして。清々しいとは、こういうことをいうのだ。寒さが愛おしく、ネックウォーマーと帽子を取り払って、外の空気を思いっきり吸った。朝、始まり。


 気分が落ちたり上がったり落ちたり上がったりする。仕事はそんな個人の感情を無視して進んでいき、体調管理に気をつけるのはいわば、国民の義務だ。上がっているときには、落ちても大丈夫って思ったりするのだが、落ちている時はもう2度と上がれないのではないかなんて考えてしまったりする。そんな時、救ってくれるのは「偶然」だったりする。そんな「偶然」が、ごろごろ転がっていることに気づけない毎日。「無駄」といって見向きもしなかったところに「救い」があるんだって気づいて。だから、日々はとてつもなく愛おしくて、たまに振り返って噛み締めることが出来れば世の中はきっともっと明るくなる。


 だからこそ、まだ、死にたくないなぁ〜ってふと思った。やりたいこととかこれを成し遂げなければいけないって思うことはないけど、まだこっち側にいたいって思う。今日しか生まれなかったこととか、明日訪れるものに対して僕はそれに名前をつけたい。言葉を紡ぎたい。言葉をかけて、また新たな街の「本当」を見たい。「本当」というあてもない、人によって違う正解を見つけ出すために生きているんだっていま、気づいた。

まだ、ぼやけてる「本当」。自分が求める

「本当」を探す旅。人生。いつ終わるかわからないから、笑って、必死で、幸せを探して、不器用に、思いっきり生きているのだ。


 朝、まだ人も車も少ない。24時間営業のコンビニに入り、眠そうな店員さんを横目に、炭酸のジュースと、お弁当とお菓子を買う。

 袋に入れてもらって帰り道。信号待ちをしていてふと気づいた。お弁当が縦になってる!中身がぐちゃぐちゃだ。どうしようもない1日の始まりに、少しだけ笑った。




おわり。




あとがき。

 ずっと胸中にあったことを吐き出すツールとして僕には小説がある。常に考え事をしてしまいもっと軽く楽観的に生きることもできるのだろうがそんな時に時間とか世界が進んでいるのが少し怖いのだ。自分が知らないうちに世の中が変わっている。もちろん全部を把握することなんて無理である。だからせめて自分の周りのことは、自分で頑張りたいのだ。そんな時に溜まってしまったものたちは僕にとってすごい面白いものなのだ。だからこんなふうに言葉にしてみる。何より自分のためである。僕にとって小説を書くということは、生きていく上で必要不可欠なものになってきた。これは僕にとってとても素敵なことなのだ。読んでいただきありがとうございます。今後ともよろしくお願いします。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

朝、始まり。言葉がぼやけて、まだ。 木田りも @kidarimo777

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ

参加中のコンテスト・自主企画