閑話 童神


 陰陽博士。


 陰陽頭、陰陽助に次いで位の高い陰陽師である。


 陰陽博士の序列二位「犬神博士」は、単純な能力の比較だけで言えば、陰陽頭にも引けを取らないと言われるほどの実力の持ち主である。


 しかし、その実態は年端もいかぬ美麗の少年であった。


 彼が何者なのか、何時陰陽師になったのか。


 生まれも育ちも不明。


 一つだけ、彼に関するある噂があった。


 以前、彼は「メシア」と名乗って革命運動に興じていた、という噂である。


 まだ幼い彼を、周囲の大人が救世主として祭り上げていたとかいなかったとか。


 齢五つにして、大男を殺害したとか。


 呪文を唱えるだけで大きな屋敷を全焼させたとか。


 サイコロの出目を自由自在に操れるとか。


 色々噂には尾ひれがついていて、イマイチ釈然としない。


 

 彼に関してはっきりと言えることはこれだけ。






 彼は女の子のような恰好で、どこからともなくふらりと現れる。


 そして、陰陽博士として「犬神博士」と名乗っている。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

アベノ・アミクルムス 堂廻り 眞くら @Dogramagra

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

フォローしてこの作品の続きを読もう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ