椿と北極星
鍋谷葵
椿と北極星
椿よ、咲け!
お前はしぶとい花弁を持つ。
ただ寒夜の中で滅びを待ちながら、
暗闇の中で凛と咲け!
散りゆく花よ、雨垂れを受け止めろ!
盛りの終わりは夜風をほのかに香りづける。
ただ倦怠の夜を呪いながら、
木肌を潤す無情の露を知れ!
赤き落花に満ちる孤独な夜よ!
お前は恐れの中に煌めきを宿らせる!
慟哭さえ受け止める聖なる沈黙よ、
地に落ちた我らに北極星授けたまえ。
※以下、説明文となります。
椿という花は個人的な観点となりますが、見た目の華やかさと反して、生活においては地味な花だと思います。それもいつまでもしぶとく花弁を残す姿と、地面に落ちて消え行く様の汚らしさが、花の散りざまとしてあまりにもゆったりしているためです。
ただ、椿には『誇り』という非常に人間臭い花言葉を有しています。そこで、椿の見た目に反した生活に対する地味な態度と、意味的な人間臭さとを掛けて孤独な人間を慰める様な詩を書きました。
一連目は誰からも認められないかもしれないという不安を払拭させるため、椿(孤独な人間)に対して力強く咲くことを勧める形から入ります。ただし、放任的なアドバイスではなく、あくまでも孤独の中で人生が終わるかもしれないというリアリズムをつきつけるように言葉を連ねています。
二連目は花の盛り(社会的な肩書がなくとも許されていた青春時代)に、何も成し遂げることが出来ず終えてしまったことに対する無情感と、これに対する怒りを示すよう書きました。ただし、その怒りは虚無に向けられたものではなく、うっすらとした経験しか出来なかった自分に対するものです。
三連目はもはや腐りゆくだけの存在となった花に満ちる孤独な夜という空間に、身を任せ、過ぎ去る時を祈り(全ての人に対して明確な道標となる北極星のような存在になれるように願う。いわば、自分の持ち得ない役割を持てるように願う)と共に待つことを示しています。
椿と北極星 鍋谷葵 @dondon8989
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