占い師

UD

占い師

 彼には三分以内にやらなければならないことがあった。


「なあ、君はあの人が言ったことを本当に信じているのかい?」


「まさか。僕はそんなに簡単じゃないさ」

「いや、でも現にこうして君はここにいるじゃないか。それが信じているってことになるのじゃないか?」

「それは違うよ、アーツ。僕は僕の意志でここに来たんだ。占い師に言われたからとか、いや言われなくても僕はここに来たはずさ」


「ああ、それこそがあの人の予言通りの動きじゃないか。君はどうして」

「僕だって来たくはなかったんだ。だけどどういうわけかここに来るようになってしまったんだよ。今朝から、会う人皆にここに来るように言われたり、用事を頼まれたりさ。最初は断ってたんだよ、今日は家から一歩も出ないと誓ってね」

「あの人が言った言葉を忘れてしまったのかい? ここに来たら君は死んでしまうんだぞ?」

「君こそあいつの言葉を信じているのかい? いや、心配してくれるのはありがたいよ。だけど君も言ったようにあいつの言葉を真に受けて暮らしてなんかいられないよ」

「そうはいうけど、もし君が本当に死んでしまったら。もしかするとあの人が君をここに来るように差し向けたとか」

「それこそなんのためにだい? まさかあいつが私を殺そうとしているとでも? 私を殺すことになんのメリットがあるというんだい?」

「ああ、君は知らないのか。あの人は今、世界的に勢力を拡大している宗教の伝道師なんだ」


「なんだって? それは初耳だ。でもアーツ、どうしてそんなことを知って」

 その時、ビルドの胸にナイフが突き刺さり地面に倒れ込む。


「あの人を紹介したのは私だろう。私は君が我々の神を信仰してくれるのかを試していたんだよ。とても残念だ。ここまでの質問に君がきちんと応えてくれていたら君を天に召さなくても済んだのに。君が神を信じられれば、一度天に召され神のお言葉を直接聞き現世に戻されるのだとね。三分で終われてよかった」


(完)

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占い師 UD @UdAsato

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