第6話 デートのお誘い

 ゲーム終了後、所属課員から一通のメールを貰っていることに気がついた。

『課長、ゲーム楽しめましたか?

 ハロウィンも近かったので、サプライズイベントをプレゼントしました。

 感想もぜひ聞かせてくださいね♪』

 まぁ、FPSというより、格闘ゲームだったのだが…


 さて、悪夢のような週末の祭りゲームが過ぎ去り、退屈な日々が返ってきた。

 いつも通りに、中間管理職の仕事をこなしていると、モエが書類を携えて私の机にやって来る。

「課長、ご依頼ありました資料出来上がりました。」

「ああ、ありがとう。

 そこのレターケースに置いてくれ。」

「はい。」

 作業中の私の手を止めないように、彼女は書類を私のレターケースに置いた。

 さて、モエはメガネを外し、髪もアップにまとめ、可愛らしい素顔を晒している。


「書類、置いておきました。」

「ああ、ありがとうね。」

 さて、席に戻りかけたところで、彼女は改めて私の机の前に正対します。


「あのぉ~…マモルさん。

 土曜日は楽しいデートありがとうございました。」

「ああ。」

 モエの言葉に、仕事にかまけて生返事で返してしまう私。


「今度の土曜日はゲームじゃなくて、リアルのデートに付き合って下さいね。」

「ああ。」

 モエはお辞儀をすると、自席に戻って行った。

 が、私は生返事で返したまま…。


「…ん…ん…んん?」

 数十秒後、言葉を反芻した私は慌てて席を立つ。

「モ、モエ君…ちょっとぉ…。」

 モエは再び私の机に戻ってくる。

 課員はみんなクスクス笑っている。


「私事は、休憩時間にお願いするよ。」

 私は彼女にウィンクをしてみせる。

「はい!

 スイマセンでした。」

 嬉しそうに笑うモエちゃん。


 何とも、奇妙なハロウィンを迎えてしまったものである。

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ボケ桜の咲く頃に たんぜべ なた。 @nabedon2022

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