第5話 トランプ城崩壊
狂ったお茶会団を
「本っっっ当に、勘弁してほしいわ!」
「そうですよ!」
服はすっかり泥とホコリまみれ。
乙女の柔肌には擦り傷切り傷のオンパレード…。
「もう、お嫁に行けないわ!」
そう言って失笑するオレ
「そうですよ!」
オレの言葉を真に受け、プンスカしている白ウサギ。
さて、『死刑執行人』が陣取っていた位置から見えるのは、あいも変わらず趣味の悪いカボチャの月と…
「ノイシュヴァンシュタイン城?」
言わずと知れた『シンデレラ城』のモデルになったとされるドイツにある城である。
オペラグラスで城の方に視線を送れば、トランプ兵の隊列の中を馬場から城門へ入場する公爵夫人の姿。
彼女はフラミンゴとハリネズミ、そしてグリフォンの着ぐるみを従えていた。
「
「ま~しゃるあ~つぅ?」
白ウサギが首を捻る。
白ウサギは何故かモジモジしている。
「どうかしましたか?」
「…」
オレは白ウサギの手を離し、彼女の前に屈み、その瞳を見つめる。
「私ね…あの舞踏会に参加しないといけないの。」
白ウサギは泣きそうな顔をしている。
まぁ、無理もない…先程まで死線ギリギリの戦闘を重ねてきたのだから…
この先の展開も想像がつくというもの。
一つ深呼吸をしてオレは俯き気味の白ウサギの肩を叩く。
「付き合いますよ。
火の中水の中っ…てね。」
オレがウィンクすると白ウサギは涙を流しながら顔を上げる。
「勝てる見込みありませんよ?」
「勝つ必要はないわ!」
「??」
オレの言葉に首をひねる白ウサギ。
「ダメージを与えて、トンズラするのよ!」
「あはっ!」
オレの意見に笑い始める白ウサギ。
一頻り笑いあったオレたち。
「では、
「
白ウサギも、ようやくオレの『ノリ』について来れるようになった。
まぁ、それからは大変!
言うは易いが、行動は難し…。
あいも変わらず銃弾は四方八方から雨のように降り注ぎ、どうにかこうにか一拠点ずつ制圧していく…。
勿論、弾切れもあれば、
「っしょい!」
その都度、敵の銃器を奪い戦闘を続行する。
ようやく戦闘が終わる頃には、お城の舞踏会も最高潮!
「…どうやって侵入しよう?」
白ウサギが戸惑っている。
城門はキッチリ閉まっている。
「さて、どうやって侵入しましょうか?」
「うぅ…。」
二人で思案していると、微かに聞こえる時計の動く音…チクタク、チクタクっと。
二人の視線が目覚まし時計に向く。
時計の動く音…チクタク、チクタクっと聞こえて来る。
「ひょっとして、これを舞踏会場へ配達すれば、解決する?」
「ええ…たぶん。」
オレの口角は上がり、白ウサギは小さく頷く。
「よっし!
では早速配達しちゃいましょう!」
言うなり、オレは白ウサギの手から目ざまし時計を奪います。
パチンッ!と何かが弾ける音が聞こえます。
耳を当てれば、時計の音はチクタクから、ピッピッとデジタル信号に切り替わっています。
時計を見れば12時まで残り1分。
「貴女は、直ぐに内堀の外に出なさい!」
白ウサギはオレの顔を見ると、一目さんに内堀の外へ走っていく。
時計は30秒を切っている。
オレは、円盤投げの流儀で目ざまし時計を振り回し、三回転目で舞踏会場となっている中央エントランスと思われるステンドグラスへ目ざまし時計を放り込む。
ステンドグラスが割れ、ガラス片が降り注ぎ始めるタイミングで、オレも白ウサギのもとに走り始める。
六~七歩走ったところで、轟音と悲鳴が背中を押してくる。
更に、建物が崩壊する衝撃波に押され、倒れかけながらも何とかオレも内堀の外へたどり着き、振り返れば、トランプ城は内側に向かって潰れていった。
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