第4話 デートが闇夜にやって来る

 ネズミにトカゲに…ドードー鳥?

 着ぐるみを着た可愛くもないオッサン連中が転がっている。


 白ウサギをエサに近づいてきた連中を片っ端からオレが締め上げて消す…で、彼らはオレたちの前に転がっている。

「凄いですねぇ~。」

 感嘆の声を漏らす白ウサギ。

「そ…そうかしら?」

 そう言って、オッサン連中の懐を捜索しているオレ…武装・銃器エモノも確保出来た。


 荷物を剥ぎ終わり立ち上がると、オッサンの一人が破裂する。

「??」

 慌てて周囲を見回すがヒトの気配はない…そして一息置いて響き渡る発砲音!

「狙撃かぁ!」

 門柱に身を隠すと、足元を銃弾がかすめ飛び、遅れて発砲音が届く。


「どのくらいの距離なんだ?」

「何?何がどうなってるの?」

 オレが呟くと白ウサギは目を白黒させている。


 とりあえず、相手を…とその間も銃弾は飛んでくる。

 この門柱もどのくらい持つかわからない。


「ねぇ、ウサギさん。」

「何でしょう?」

手榴弾パイナップルを撒きます。

 爆煙が広がったところで向こうの物置へ走りますよ。」

「はぁ~い!」

 手榴弾パイナップルのピンを抜き、逃げる先と反対方向それぞれにバラまく。

 しばらくの爆発騒動…終わったところで白ウサギの手を取る…。

 白ウサギは手を握り返してくる…指を絡ませ、恋人つなぎに!


 その瞬間に、オレの脳裏に去来する風景…

 アリスの衣装をまとった、ザビエル頭の脂ギッシュな中年太りオジサン二人が、恋人つなぎで手を結びスキップしている。

 そして、二人の周囲には…

 これまた、禿げ上がったザビエル頭の脂ギッシュな中年太りオジサン一糸まとわぬ姿スッポンポンに、白いふんどしと小さい羽根と天使の輪を従え、黄金のラッパを奏でている。

 しかもそんな出で立ちのオッサンが五~六人、アリス姿の怪しいオジサンたちの周りを飛んでいやがる!


 …オレの中で、何かが音を立てて崩れるような気がした。


 気を取り直し、オレたちは小屋の影に駆け込む。

 振り向けば、先程まで隠れていた石造りの門柱は破壊された。


 さて、爆煙が収まってきたのを見計らいオペラグラスで、狙撃拠点と思われる所を一箇所一箇所確認していくと…。

 居ましたよ!物干しざおBarrett M82をかまえた『死刑執行人』。


 おまけに彼の足元からは、マッチ箱XM556を携えた三月ウサギに帽子屋、そして眠りネズミと狂ったお茶会の面々(着ぐるみのオッサン)方がこちらに向かって走ってきている。


 ふと視線を感じ、そちらに目を向ければチェシャ猫(こいつは、太めのねこさん)が、こちらを眺めながらゴロゴロと喉を鳴らしている。

 すかさずハンドガンM92Fでチェシャ猫を撃ち抜こうとするオレ。

 しかし、銃弾はチェシャ猫をすり抜ける。

 結局、マガジン一本分の銃弾はチェシャ猫をすり抜けるだけだった。


 チェシャ猫はあいも変わらず、こちらを眺めながらゴロゴロと喉を鳴らしている。


 白ウサギがオレの一連の所作を見届けてから相談してきた。

「無視しませんか?」

「そ、そうだな…。」

 オレは再度オペラグラスで周囲を確認し、狂ったお茶会の面々を避けるように迂回しながら『死刑執行人』を目指すことにした。


 さて、移動しながら白ウサギの方に視線を向けると楽しそうに腕を振って…スキップまでしている。

 オレはその姿を見て…青ざめていく。


 だって、そうでしょ?

 オレの脳裏に去来している風景といえば…なのだから。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る