第4話

数分後


着信音とともに一件のコメントが来た。

恐る恐る見てみると

『ストーリーの始まりが独特で面白かったです!』

たった一行の文章でこんなに気が抜けたのは初めてだ。

「認められた、のか?」

初めてだった。こんな気持ちになるのは。

誰かに認められる、褒められるそれがこんなにも心地の良いことだなんて知らなかった。

小説は俺を成長させてくれる。

俺に新しいことを教えてくれる。


そんなことを考えていたときカタンという音が聞こえた。

「あいつか、」

きっと今日もあいつがプリントを届けてくれたのだろう。

いつもはこの音を聞くと少しムカついてたけど今日は何故かそう悪い気はしなかった。


「なんかすごい気ぃ抜けたな。

ちょっと寝よう、」


なにかとても騒がしい。

アラームかけてたっけ


重たいまぶた持ち上げるととんでもない量の着信がパソコンに溜まっていた。


「なんでこんなに、コンピューターウイルス?

とりあえず内容確認、って全部小説関係のものばかりじゃねぇか。」


『今日のランキング1位』に俺の作品がある。


一瞬寝ぼけているのかと思ったが何度確認しても正真正銘俺の作品だった。

「うそだろ、まじかよ」


ちなみにこの小説投稿サイトではランキング上位に入ったり、コンテストにだして優秀な成績を収めればその本が書籍化し、担当編集がつくという。


うまくいけば小説家デビューも夢じゃないってことだ。


「一応文字数はたりてるしコンテスト、出してみるか

いや、その前に他の人の作品も見てみよう。」


俺は言葉を失った。

一瞬でも小説家デビューできるかもしれないと思ったことが恥ずかしい。

1日のランキングで1位になることは別にそれほど珍しいことではないらしい。

それに、コンテストに応募している作品俺の作品よりはるかに面白い。

閲覧回数も俺の10倍はある。



書き直せ

一からプロットを組みなおせ

作品の設定を確認しろ

読者は何を求めているのか考えろ

書け

文章を書け

小説を作れ

面白い作品を作れ

甘えるな俺

認められたと思うな

小説は読者の反応で決まる。

もし自分が読者だったらこの小説は続きを読みたいと思うか?

続編が出たらうれしいと感じるクオリティなのか


違うよな

素人が書いた小説

面白いと思うのはほんの一瞬

他の名作にどんどん埋もれてく。

もっと人の印象に残る小説を書け

自分にしか書けない物語を作れ。

寝てる暇なんてない。

今日は徹夜だ。


とりあえずオンラインショッピングサイトでエナジードリンクをひと箱購入。

急ぎの便で注文はしたがまだ時間がかかるだろう。それまではコーヒーで。

ふと時計をみると22時過ぎ。

「まだ、いける」

俺の集中力は意外とすごかったのか荷物にも、今日のプリントを受け取るのも忘れ小説を書いていた。


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