第2話 おひるやすみ

「なるほど、ついにお前にも青春がやってきたか……」


「そんな小綺麗なもんじゃない。それに彼女ができれば青春ってものでもないだろ?」


「それは勿論そうだが生きてるのか死んでるのかもよく分かんないような生き方をしてるハジメが急に人間ぶったことしたらさしもの俺も驚くさ」


 しれっと言いたい放題言われてしまった……


 こいつは幼馴染の足立颯、近所付き合いが今でも続いてる奇妙な間柄だ。


「はぁ、そんなお前はどうなんだよ?」


「俺か?俺も彼女は欲しいが、なにぶんお眼鏡にかなう子がいないからな」


「そのこだわりそんなに必要か?」


 俺がそう呟くとハヤテは立ち上がって言った。


「必要も何も最優先事項だろ!?俺は絶対に王子様系の子と付き合うって決めてんだよ!」


 やっぱりこいつ拗らせてるよな……顔いいのにもったいない。


「……あれ?もしかしてあそこにいるのが

 ハジメの彼女?」


 そう言われてハヤテの指さす方を見るとそこには、こちらを凝視する蜜谷さんの姿があった。


「そう、ちょっと席外すわ」


 そして僕は蜜谷さんのもとへと寄る。


「どうしたんですかミコトさん?わざわざ僕のクラスまで」


「あっ、えっと……日課の観察、です」


 おっと、さては物騒な話だな?僕はさらに質問を重ねる。


「その観察は誰の?いつからやってるの?」


 すると蜜谷さんはバツが悪そうに言った。


「ハジメ君の観察を、ずっと前から……」


「まあ、そんなとこだろうと思ってました」


「いいですかミコトさん、僕たちはもうカップルなんですからそんなことしないで下さい。別に近くに来てもらっても僕は別に無碍に扱ったりしませんよ」


 すると蜜谷さんは不意に顔を赤らめる。


「そんな、公衆の面前で言われると照れちゃいますよ〜」


 そんなつもりで言ったんじゃないけど……


「とりあえずもう時間ですから、早く教室戻ってください」


「うん、分かった……あっ!その前に!」


 蜜谷さんはそう言うと僕の方を向き直して言った。


「今日のお昼は空いてますか?」


「え?」


「私、お弁当作ってきたので一緒に食べませんか?」


「なんだそういうことですか、友達と一緒でも良ければ喜んで」


「足立さんのことですね!全然構いませんよ?私もご紹介したいひとがいるので!」


 当然のように把握されてる、多分会ったことないのに……


「それじゃあ屋上で待ってますね!」


 ・・・・・・


 そして俺は昼休み、屋上へ来ていた。ちなみにハヤテは部活の用事で来れなかった。


「にしても屋上初めて来たんだよな……どこにいるんだ?」


 すると陰から蜜谷さんが顔を覗き込んで声を上げる。


「あっ、ハジメ君!こっちです!」


 そこへ行くと、そこには蜜谷さんともう1人友人らしきひとが座っていた。


「ごめん、待たせました。そこにいるのが友人ですか?」


 俺がそう尋ねるとその人は立ち上がって自己紹介を始めた。


「初めまして!ボク、ミコトと同じクラスの四谷渚よつやなぎさっていいます!へぇこの人がミコトの彼氏さんかぁ……いい人そうで安心しました!」


 なんていうか元気な人だ。見た目もかなりボーイッシュだ……試しに聞いてみるか。


「四谷さん女性から人気そうですけど実際どうなんですか?不躾だったらすいません」


 俺がそう尋ねると四谷さんは一瞬顔を強張らせて言った。


「あ、あぁ〜それなりかな?」


 そこへ蜜谷さんが口を挟む。


「それなりも何もナギサちゃんは学年でもトップクラスで女の子からモテモテなんですよ!」


「もぉ!何で言っちゃうのさ!それに何で自慢げなの!?」


「そうなんですね……」


 こんな日に限って予定が入るとは……足立も運のないやつだ……


「ところで足立さんはどうしたんですか?」


「えっ!?ど、どうして急に」


「足立さんも一緒ってハジメ君が言ったんじゃないですか」


 そ、そうだった。絶妙なタイミングだったから少し動揺してしまった……


「あいつなら部活の用事で来れないそうです」


「だって、残念ねナギサちゃん」


 すると四谷さんは途端に顔を真っ赤にさせて言った。


「べ、別に残念なんかじゃないよ!?」


 おや?これはもしかして、いやもしかしなくても……


「好きなんですか?ハヤテのこと」


 俺が尋ねると四谷さんは表情を硬直させそのまま蜜谷さんの後ろに隠れてしまった。


 それを見かねて蜜谷さんが代わりに答える。


「好きも何も、この子は中学生のとき部活の大会で足立さんを見てからゾッコンなんです」


「だから何で言っぢゃうのざぁ!!」


 するとそこで予鈴が鳴った。


「それじゃあ僕もう教室戻りますね」


「そうね……ってあ!?お弁当食べてもらって

 ない!」


 そういえばそうだった、すっかり忘れていた。


「どうしよう……そうだ!ハジメ君今日は暇な日ですよね!放課後ハジメ君の家行ってもいいですか!?」


 流石に寝耳に水すぎる。もはや水ではなく炭酸水が流されたぐらいの衝撃だ。


「ど、どうしてそんなことになったんですか!?」


「だってもうこうなったら出来立て食べてもらうのが一番ですから♪」


「それじゃあハジメ君、また放課後に校門前で待ってますね!」


 すると2人は教室へと戻っていった……


「何が起きたってんだよ……」


 次回、擬似お家デート!?

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ドライな僕と重めな蜜谷さん 神在月 @kamiarizuki10

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