第17話日本全体バリア作戦
「社長、また三☆グループからお電話です。」
菊岡さんが受話器を押さえながら、すまなそうに鬼塚に報告した。
鬼塚宛に新しい武器の発明依頼が、しつこいくらい来ているそうだ。
「丁重に断って。颯太に言われたからね。自分は武器は発明しない。」
鬼塚は首を横に振って答えた。
「そうは言っても、いくつかの武器製造会社は、えげつない方法でお前に、武器の発明を迫っているんだろう?。」
俺だってちょっとは鬼塚の事が心配になっていた。
「うん。彼らへの牽制の為、明日防衛庁長官と会うことになってるんだ。」
「防衛庁長官?。まさか、武器を発明するんじゃないだろうな。他人を傷つける物を作るなよ。」
「イヤ、武器じゃなくて、バリアを提案しようと思ってる。」
「バリアって、何?。」
「日本全体を核攻撃やレーダー砲などから防ぐバリアだよ。」
「日本全体にバリア?。壮大過ぎる。それに核攻撃からも防ぐなんて規格外過ぎるだろう。」
「実は今使ってるバリアを応用するだけなんだ。だから時間はかかるけど、難しくはない。」
「今使ってる?。」
「自分の様に世界で認められた発明家は、他の国家かも狙われるんだ。拉致されて強制的にその国の発明をさせられたり、何かの発明を妨げる為に暗殺される可能性があるんだ。だから、自分用にいつでもバリアを張れる様にしてある。」
「え?、嘘だろう?。初めて聞いた。今でも?。」
「ああ、自分だけでなく、専用運転手と、菊岡さんと、颯太にも、何かあったらバリアが張れる。」
「 俺も?。一体、どうして?。」
「颯太とあやかし書店に行くところを狙われるかもしれないからな。」
「そんな事、全然知らなかった。」
「まあ、誰にも言ってないから。車で外出したり、菊岡さんを連れて誰かに会ったりするから、専用運転手と菊岡さんにもバリアがついてる。」
「会社全体が狙われる時は?。」
「まず、爆発物や武器を持った人間はこのビルのエントランスに入れないようにしてある。」
「そういえば、前に、どうしてもエントランスにはいれないでいた人を見た事がある。その人が入ろうとすると、自動ドアが閉まってた。」
「ああ、何か武器を持ってたんだろうね。」
「じゃあ、今のバリアシステムを日本全体にする事は、可能なんだ。」
「そうだけど、ただ、広い範囲なんで何箇所にも機械を設置するから、工事が大変だし時間がかかる。面倒なんだよ。」
「でも今のバリアでまさか核攻撃は防げないだろう?。」
「ああ、そのままでも機関銃や日本刀、ロケット弾くらいは大丈夫だけどね。だから、バリアを何重にも張るんだよ。経費がかかるけど、国費だからね。」
防衛庁長官と鬼塚との会議で、早急に日本中にバリアを設置する工事が始まることになった。
バリア設置の確認作業は俺と辻先輩とでする。
「やった。日本中旅行が出来る。沖縄はまだ泳げるだろうし、僕、寒いの苦手だから、北海道はパス。だから、僕は沖縄から京都、奈良まで担当するから、颯太は三重から北海道までよろしく。お土産も待ってるから。」
「辻先輩、仕事ですからね、観光気分は押さえてください。」
「だって、人生楽しまないと。いつ死ぬか解らないから。まあ僕は百才まで生きるつもりだけど。」
「まあ、いい人から死んでいくっていうし、憎まれっ子世に憚るともいいますね。きっと辻先輩は長生きしますよ。」
「なんだよ、颯太。褒めるなよ。」
「辻先輩、話長いです。俺、電車の時間があるから行きます。」
「全く颯太は真面目だから。まずはコンビニで買い出しでしょ。おーい。聞いてないな。もう行っちゃった。しょうがない。僕も行くか。」
東西3000Km、南北3000Kmの日本を500Km²のマス目に区切り、バリアのマシンを設置していくのはかなりの手間だったが、政府主導で国費に余裕があったから、数カ所同時に急ピッチで工事が行われた。
颯太は冬休みの全てがバリア設置の確認作業にかかりきりになる予定だ。
ー菊岡さんに会えないのが一番堪えるな。声は聞けてもね。ー
「颯太。待った?。久しぶり。」
「菊岡さん、本当に来てくれたんだ。逢いたかった。」
「年の暮とお正月しかお休みもらえなかったの?。」
「そうなんだ。冬休み中の仕事だから、授業は休まなくてすむけど。働かせすぎだよな。」
「でも、こうして仙台でデート出来るんだから、文句言わない。」
俺達は先ず定禅寺通に向かった。
仙台市中心部のビルの谷間を彩る、160本のケヤキに施された約60万球ものイルミネーションが美しい通りを、二人で手を繋ぎながら、ゆっくりと歩いた。
ーまるで異世界に迷い込んだようだ。キラキラだらけの風景の中の女神みたいな菊岡さんを独り占め。最高過ぎるだろう。ー
「丸の内やけやき坂もステキだけど。ここも、雰囲気があっていいわね。」
「どんなに綺麗な風景でも、菊岡さんには負けちゃうけどね。」
「呪術師の訓練は、今、お休みなの?。」
「そうなんだ、また、冬休み明けから再開だよ。」
「本当にいいの?。呪術師になって悪いあやかしや怪異と戦うの怖くない?。」
「爺ちゃんの遺言もあるし、悪いあやかしを退治するのは、良いあやかし達を守る事にもなるし。やれるだけやってみるよ。菊岡さんだって以前魔法少女で怪異と戦ってたんだしね。」
「私達は怖いもの知らずに魔法を信じてたから。今だったらちょっと戸惑っちゃうかも。」
「菊岡さんは何歳になっても戦うでしょ。」
「ひどい。私ってそんなに気が強い?。」
「俺は何かあったら、逃げようとするけど、菊岡さんは立ち向かうでしょ。」
「颯太は逃げようと考えても、結局逃げないでしょ。人に優しいから。」
「優しいって言ってもらったお礼にパフェをご馳走するよ。その先の店、パフェが有名なんだ。」
ー爺ちゃんが自分の妻を怪異に殺されて立ち直れないほど傷ついた事を知ってる俺は、菊岡を守れるようになるって決めたんだ。「俺みたいになるな。」って爺ちゃんは言ってた。俺は視えてたって幸せになるよ。爺ちゃん。ー
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