第14話菊岡さんの挑戦
菊岡さんが正社員として鬼塚の会社に勤め始めて数ヶ月がたった。
俺は高校に通いながら、この会社にアルバイトで通っている。
「菊岡さん、SNSを始めたの?。」
「そうなの。」
「魔法少女時代のSNSの炎上のせいで、あんなにSNS嫌いだったのに?。」
「実は魔法少女をSNSの悪意から守る会を作ったの。」
「どういう事?。」
「魔法少女は目立つから、嫉妬とか、逆恨みみたいな悪意を持たれることが多いの。」
「まあ、魔法少女は可愛いし、やっかまれる事も多いよね。」
「そうなの。目立つ人を攻撃して、自分のストレス解消をする人が沢山いるの。そんな人達の悪意があるメッセージに反論するのが私達の役目。」
「そうか、誰かが魔法少女をSNSで攻撃すると、関係ない沢山の人まで魔法少女を攻撃しだすからね。それを防ぐんだね。」
「今、会員も増えて、みんなで魔法少女を応援してるの。」
「それはイイね。鬼塚に魔法の道具を発明してもらって、菊岡さんもまた魔法少女をやったら?。フリフリの服を着て。似合うだろうな。」
「冗談はやめて。魔法少女は13歳で引退するの。」
「菊岡さん、まだ16歳じゃないか。三歳くらい誤魔化せるって。」
「もう、あんまりからかうと、怒るわよ。」
「ごめん。でも、菊岡さんの魔法少女姿、見てみたいよ。そうだ。魔法少女のコスプレすれば?。コミケとか行って写真撮ろうよ。」
「そんな時間はないの。魔法少女に対する法定な立場を強化する法律改正を求めて署名を集めにいかないと。」
「どういう事?。」
「魔法少女に警察官や自衛官と同じ様な法律的な立場を保証してもらうように求めているの。」
「もう少し簡単に言ってくれない?。」
「魔法少女は怪異や悪の組織と戦うけど、法律で認められてはいないの。」
「そうなんだ。給料もでないの?。」
「もちろんよ。単なるボランティアなの。」
「それは酷いな。せめて成功報酬とかあげたら良いのに。」
「だから先ずは、魔法少女の活動を法定に認めてもらえるように働きかけてるんだ。」
「凄いな。流石、菊岡さん。何か俺に手伝える事があったら言ってくれよ。」
「ありがとう。その時にはお願いね。」
二人で話ている所に辻先輩が割り込んで来た。
「菊岡さん、魔法少女に興味があるの?。」
「ええ、辻先輩もですか?。」
「僕、魔法少女には詳しいんだよ。ほら、これ見てよ。」
辻先輩は鞄からスクラップブックを取り出して見せた。
そのスクラップブックには歴代の魔法少女の写真が集められていて、菊岡さんの魔法少女時代の写真もはいっていた。
「辻先輩、魔法少女オタクだったんですね。」
「そうなんだ。魔法少女は僕の命。」
「でも、法律的にまずいんじゃあないですか?。ロリコンは。」
「いや、僕はそのへんの女子小学生には興味ないからね。ロリコンって呼ばないでよ。」
「じゃあどうして魔法少女が好きなんです?。」
「だって、可愛いでしょ。」
「まさか、魔法少女の実寸大で描かれた抱き枕とか持っていでしょうね?。」
「え?、持ってるけど。」
「キモい。まあいいわ。私、魔法少女のファンクラブに入ったんですけど、辻先輩もはいれませんか?。」
結局、菊岡さん、俺、辻先輩の三人は魔法少女のファンクラブに入会し、魔法少女への攻撃的なSNSに対して、反論するのが日課となった。
「こんなに魔法少女にバッシングしてくる人が大勢いるなんてね。」
「本当に。他にする事ないのかな?。」
「辻先輩、魔法少女の活動を法律で認めるよう働きかける活動に署名をしてくれます?。」
「もちろんいいよ。それにしても、菊岡さんが、魔法少女に対してこんなに熱心だったなんて、知らなかった。」
「私、辻先輩みたいな魔法少女オタクじゃあないけど、魔法少女のファンなんですよ。みんなで魔法少女を応援しましょう。」
「いいよ。みんなで魔法少女ダンスをおぼえないかい?。」
「それ、必要ですか?。」
「来月、魔法少女のコスプレして、みんなでダンスする大会が幕張であるんだ。チーム戦のダンス優勝チームには魔法少女の握手券をもらえるんだ。参加してみない?。」
「そうね。そこに行ったら、魔法少女の活動を法律で認めるよう働きかける活動の署名を沢山集められるかも。参加しましょう。颯太もお願い。」
会社のみんなにも声をかけてみると、辻の幼馴染である藤城薫と、彼女の友人の白崎麗花も参加することになった。
「薫はダンスが上手いから、リーダーになって指導してくれ。」
「解ったわ。皆よろしく。魔女ダンスの動画を皆に送ったから、今日中に覚えておいて。明日から合わせるわ。後、衣装とメイクは麗花が担当するから、まかせてね。」
薫はそう言って、麗花と菊岡さんに、意味ありげに目配せをした。
次の日から毎日、ダンスの特訓が始まった。
「女性陣はダンスが上手ね。問題は颯太、もう少し笑顔で踊って。顔が引きつってる。辻ちゃん、ワンテンポ遅れるわよ。気を付けて。」
ー俺は菊岡さんの魔法少女姿が見られるなら、なんだってやってやる。ー
あっという間に大会前日となった。
「じゃあ、明日の本番の衣装で踊ってみましょう。」
「ちょっと待って俺達も女装?。スカートに、このタイツ履くの?。」
「もちろんよ。麗花はメイクがプロ並みよ。颯太君と辻ちゃんも、凄い美人になれるわよ。」
「嘘だろう。女装させられるのかよ。男のままダンスしてもよくねぇ?。辻先輩だってそう思うでしょ?。」
「いやいや。滅多にないチャンスだし、ここは女装しようよ。颯太。」
「嘘だろう?。辻先輩裏切り者。誰か助けてくれ〜。」
「男なら覚悟を決めて女装しなさい。さあ、辻ちゃん、颯太君を捕まえて。」
そして本番当日。
「やっぱり。辻ちゃんも颯太も凄く綺麗。ちょっと筋肉質で背の高い美人の女の子よ。」
「薫さん、口が上手いから信用できない。菊岡さん、本当に俺、変態じゃない?。」
「大丈夫。颯太も辻先輩も綺麗よ。本物の女性みたい。」
「菊岡さんの魔法少女姿も最高ですよ。俺は新しい黒歴史誕生しちゃったけど。」
「何言ってるんだ。颯太。お前も俺も美人だ。自身を持って、堂々としろよ。」
「辻先輩、その格好で脚を開いて座らないでください。後、声出さないでください。ゾッとします。」
そんなこんなで死ぬ気で本番を乗り切り、準優勝を勝ち取った。
では、3位までのチームの方、別室で本物の魔法少女達と写真撮影になります。
「よろしくお願いします。え?、この二人男性だったんですか?。全然解らないからなかった。」
「僕、魔法少女の大ファンです。」
「そうです。辻先輩は魔法少女オタクです。」
「実物に会えるなんて、夢みたいだ。すみません。皆さん、握手もお願いします。」
「辻先輩、いい加減にしてください。魔法少女の皆さんは忙しいんですから。」
写真撮影を終えると、菊岡さんは魔法少女のリーダーと部屋の隅で何やら話し込んでいた。
「もしかしたら、先々代の魔法少女のリーダーだった方じゃあないですか?。」
現魔法少女のリーダーが菊岡に小声で話しかけてきたのには驚いた。
「よくわかったわね?。会ったのは初めてよね。」
「魔法少女の匂いが、あなたからします。私、歴代の魔法少女に憧れていて。特に、あなた方の代の魔法少女は、とっても強くてステキでした。」
「ありがとう。でも、私達の時SNSのバッシングが酷くて、途中で辞めさせられちゃったのよ。」
「え?、やっぱり、そうだったんですか?。いつもより、辞めるのが早いとは思ってましたけど。」
「私、魔法少女を法的に守る運動をはじめたの。」
「あれも、あなただったんですか。そういう団体が出来たのは知ってます。」
「何か気になる事があったら、私達に連絡して。それと、妖精を信用しないで。私達を無理やり辞めさせたの、あの妖精なの。」
「そうなんですか?。解りました。気を付けます。」
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