第13話菊岡さんの告白

「私、昔、魔法少女だったの。その頃の私は真面目で正義感が強い委員長タイプだったんだ。魔法少女は私を入れて5人だった。5人だけで日本中の魔法使い関連の事件を片付けるのは、なかなか大変な仕事だったわ。睡眠不足で学校の成績も下がってしまったし。それでも私達は頑張って、世界の為に戦い続けたのに…。」

「菊岡さんの魔法少女姿見たかったな。それからどうなったの?。」

「ある日、私達の戦いをビデオに撮っていた男性が、崩れた建物の下敷きになって大怪我をしたの。そのせいで、SNSでの魔法少女に対するバッシングがはじまった。無責任で根拠のない中傷が飛び交い、私達の心を砕いたわ。それでも世界の為に私達は戦い続けていたのに、一方的に魔法少女を辞めさせられたの。私は人間不信におちいったわ。SNSの誹謗、中傷。頑張ったのにやり遂げられなかった後悔で、心がぐちゃぐちゃになった。」

「辛かっただろう。俺、その時に菊岡さんを支えてあげたかったな。」

「そんな時に鬼塚社長が自分の会社で仕事をしないかって誘ってくれた。鬼塚社長は感情がないロボットみたいだった。だから逆に信用できたの。だって感情がない人は他人を傷つけたりしないでしょ。その後颯太に出会った。私、最初は颯太の事が嫌いだったけど、だんだんわかってきたの。私も颯太も、多分鬼塚社長も心に傷を持っている似たもの同士なんだって。それなのに、私だけ、他人を信用しないで、トゲトゲしていた。人を信用することに怯えるのはもうやめようと思ったわ。颯太に全てを聞いてもらいたかったの。だから今、話せてホッとしてる。」

菊岡の話を聞き終えて、颯太は、頷き、にっこり笑って、

「頑張ったね」

って言って菊岡の頭を撫でた。

「うん。」

菊岡は涙が溢れ出すのを颯太に隠さなかった。

「菊岡さんの魔法少女の写真みたいな。」

「ウソ。嫌よ。恥ずかしいもの。」

「絶対、可愛いでしょ。魔法少女って検索したら普通にでてくるよね。」

「やめてよ。黒歴史なの。」

「でも、みんな可愛いじゃん。あ、これ。このブルーの娘が菊岡さんでしょ。」

「そうだけど。やめて。恥ずかしい。」

「だって、もう心の整理がついたんでしょ。だから僕が目の保養してもいいでしょ。」

「恥ずかしいのよ。そんなにフリフリの服を着て、ポーズなんかとってるし。」

「この写真、ポスターにして部屋に貼りたい。」

「颯太、ロリコンだったの?。」

「違うけど、いいじゃん。七五三に着物着たみたいなのりで。普通に可愛いし、菊岡さん頑張ってたなって感じで。」

菊岡は笑い出した。

「そうね。よく考えると、記念よね。いいわ、じゃあ颯太の黒歴史写真と交換ね。」

「え?、俺、写真なんてほとんど持ってないよ。両親と疎遠で家族写真も無いし、学校でもボッチで集合写真くらいしかない。」

「それなら集合写真の颯太のとこだけを引き伸ばして部屋に飾るから、大丈夫。」

「それだと、首だけになるけど、夜、怖くない?。」

二人は大笑いをした。

ー魔法少女の時代の話で笑えるようになるなんて、考えてもいなかった。颯太に会えて本当に良かった。ー

と、菊岡は思った。

「これからぢうするの?。逃げ出すよりも進むって君が選んだんだろう?」

「はじめに、妖精が描いた魔法少女というイメージで、大衆選んだ平和というステージの操り人形になった過去とは決別する。その後、今の魔法少女達の為に、何かしたいな。」

「そうさ、僕達は操り人形じゃない。自分達の未来だから、どんな物語にでも出来るさ。俺もあやかしが視えるせいでイヤな事もあったけど、いつか、あやかしが視える事を武器にしたいって考えてる。まだどうすればいいか解らないんだけどね。」

「考えましょう。魔法少女だった人間にしかできない事とあやかしが視える人間にしかできない事を。」

「そうだね。君には僕が協力するし、僕を君が協力してくれる。」

「そうよ。最高で、最強でしょ。」

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