第4話鬼塚との再会

父方の爺ちゃんが亡くなって数年後、俺は両親の家を出て、この母方のじっちゃんの家に転がり込んだ。

自分の両親とはおれが視えるせいで、ぎくしゃくとして愛情も持たれなかったし、愛情を持つ気にならなかった。

しかし、父方、母方の両祖父は俺にすごく愛情を持って接してくれ、あれも彼らを愛していた。

それほど俺の支えになっていた父方の祖父が亡くなり、俺は情緒不安定になって、父方の祖父(じっちゃん)の家に転がり込んでいた。

ここはビルのワンルームで自宅兼探偵社なんだ。

俺は、じっちゃんの負担にならないように、自分の食費くらいはアルバイトで稼ごうと努力した。


俺が中学に入るやいなや、そのじっちゃんが入院した。

入院代は保険で何とかなるとじっちゃんはいっていたが、問題は探偵事務所のことだ。

ーじっちゃんが一生懸命守ってきた場所だから、俺が引き継いでやらないと。ー

そんな気持ちで、中学に通いながら、アルバイトもして、その上この探偵事務所の経営を続けていたが、客なんて滅多に来るわけもなかった。

中学生が探偵事務所を経営するんなんておかしいだろうって今、思った?。

そうだよな、みんなそう言う。

飛び込みで浮気調査を依頼に来たおばさんは、

「探偵事務所の仕事のほとんどが、浮気調査なのよ。中学生が浮気調査なんてできる理由ないでしょ。夜、一人で歩いていたらアナタ、補導されるわよ。」

と、言い放って帰っていった。

そんなある日、学校から帰ってアルバイトに行くために着替えているところに、スーツを着た子供が探偵事務所に入ってきた。

身長は160cmくらい、整った顔立ち、高級そうなスーツをきているが、どう見ても俺より年下だ。

ー冠婚葬祭にでも行くところなのか?、それとも上流階級ってやつなのか?。だけど、なんか見覚えが?。ー

「やあ、久しぶり。仕事、いや、アルバイトを依頼に来た。長期契約を結びたいので、我が社に来て契約書にサインしてくれ。」

「まさかお前、鬼塚か?。いつアメリカから帰ってきた?。お前まだ小学生だろう、それが我が社って、どういうことだ?。」

「自分は10歳だけど、小学生じゃないんだ。数年前にアメリカに留学したのは知っているだろう。小中高を飛び級し、大学と大学院を三年で卒業し、博士となって帰国して日本で会社を作ったのさ。君は中学生兼探偵事務所び運営をしているそうだね、君の祖父が入院中だとか。探偵事務所への依頼という事にするから、ここも潰れずにすむだろう。」

そこで鬼塚はひと息ついて、

「ところであやかし書店はかわりないかい?。」

と、今までの事務的な口調を改め、優しげな口調で尋ねてきた。

「ああ、もちろん変わりない。婆ちゃんも相変わらず元気で美味いおやつを食わせてくれる。」

「自分にはまだ、あやかし書店に行く資格があるのかな?。」

「もちろんさ、鬼塚は生涯あやかし書店の客で、いつだって歓迎されるさ。」

「それは嬉しいな。これで安心して仕事に打ち込める。これ、自分の連絡先だ。じゃあ、今日中に契約書にサインをして、明日から仕事を始めてくれ。」

そう言って、鬼塚は探偵事務所から出ていった。

窓から見下ろすと、ビルの前においてある高級車に乗り込むのが見えた。

ー天才で多分金持ちになって、その上、顔もいい。俺とはかなり違うな。ー

鬼塚のことは嫌いじゃないが、鬼塚に関わって面倒に巻き込まれた経験ばかりある俺としては、鬼塚の仕事を手伝うことに、少々抵抗があった。

だが今の状況で贅沢を言ってはいられない。

それに、今でもあやかし書店の事を気に入っている鬼塚は俺にとって弟分みたいなものだと思う事にした。

俺は、早速鬼塚の会社に向かった。

そこで俺は運命の人に出会う。

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