第8話 偽りの虹

☆野木山凛花(のぎやまりんか)サイド☆


私は竜星に明日だが呼び出された。

でもちょうど良い機会だな。

全ての真実を話そうとは思う。


だからこそ私はそれなりに頑張らないといけないだろう。

考えながら私は静かにご飯を食べる。

それから部屋に向かった。


「私は...生きていても良いのだろうか」


そんな事を言いながら私は手元にある写真立てを見つめる。

写真の中では義父が微笑みを浮かべている。

亡くなったお父さんも笑みを浮かべている感じであり私に向いている。

絶望感が襲う。


「何も出来なかったじゃ済まされないな」


私は考えながらカレンダーを見た。

カレンダーには明日の予定が刻まれている。

私はその事に前を向く。

それから私は勉強道具を取り出した。

こんな時は勉強するべきだな。


「...」


それから1時間が経った。

私は真剣に勉強に取り組んでいたがそれを止めてから携帯電話を休憩がわりに弄る。

そして私は動画を観る。


「...」


だけどまあ全く集中できない。

そう考えて私は動画を観るのを辞めた。

猫の癒され動画。

今は癒され気分にならない様だ。

私はそう思いつつ携帯電話を横に置いた。



考えた末に私は近所のコンビニに向かう。

それから自動ドアが開いた時に「お前」と声がした。

顔を上げると竜星が買い物袋を持って立っていた。

私は複雑な顔になる。

そして素通りした。


「待て。さっきから連絡しているのに何で無視するんだ。事実か。さっきのは」

「そうだね。事実。...竜星に報告するまでも無かった。記憶喪失も」

「充分連絡する必要があるぞ。ふざけるな」

「仮に連絡したら貴方の人生も狂うでしょ?」

「...」


沈黙する竜星。

それから「そうとは限らない」と返事をする。

そして私を見据えた。

私は「?」を浮かべながら竜星を見る。


「それは幾ら何でも大袈裟だ」

「...私は可能性の話はしてない。アイツに。つまり冬に目をつけられたら面倒だから言ってる」

「...」

「ちょうど良かった。こうしてご破産になって私は。だって貴方が苦労するから」

「お前はこれで良いのか?」

「私は貴方とよりを戻せれば良いかなって一瞬思ったけど無いね。戻したら悪夢だよ」

「...」


竜星は悩みながら何か言いたそうだったが拳に力を込めるのを止めた。

それから複雑そうな目線を向けてくる。

私はその姿を見てから溜息を吐く。

そして私は踵を返した。


「じゃあまた明日」

「1つ聞いて良いか」

「うん」

「冬はいつ出てくるんだ」

「知らない。出たら悪夢だね」


それから「その時はまた記憶が無くなるかもだけどね」と肩をすくめた。

そして歩き出す。

竜星が「ああ」とだけ返事をしてから別れた。



正直に言って私は確かに救われてない。

だがこんな人生も悪くはないんじゃないかって思い始めた。

諦めに近い様な。

近くない様な。

訳が分からない感情だ。


「...」


私は家に帰る。

すると母親が「お帰り」と言ってきた。

私はそんな姿に「ただいま」と返事をする。

それから母親を見る。


「あれ。何か良さげな事があった?」

「どうしてそう思うの?」

「顔がね。さっきよりマシになってるから」

「...そうかな」

「さっきよりかは元気よ。凛花」

「...」


私は考える仕草をする。

それから顔を上げた。

そして母親を見る。

ビニール袋を差し出した。


「アイスを買った」

「もしかしてそれが?」

「そう」

「うーん。何か違うと思うんだけどな」

「...間違ってはない。これが正当」


そう言いながら私は母親を見る。

母親は「これが嬉しい事?」とまだ疑問に思っている様だ。

私はアイスを直しに行った母親を見ながら無言で部屋に向かった。


「ありえないな。私がまだ忘れられないなんてな。彼を」


そう呟きながら苦笑する。

それから私は座布団に腰掛けた。

正直に言って私は...彼とは以心伝心とはならないし恋人になる未来が想像できない。

四葉さんという素晴らしい人が居るから問題はないだろう。


「その筈なのだけど私も傲慢だね。大罪かな」


私はそう呟きながらまた勉強を始める。

こんな私だが将来の夢がある。

記憶喪失になったが弁護士になりたいという夢がある。

正直それを叶える為にはかなり勉強しないといけない。

余所見をしている暇は、無い。


思いながら居ると襖が開いた。

それから「お風呂入る?」と母親が聞いてくる。

私は「そうだね」と返事をして母親を見る。


実は私は記憶喪失になる前にかなりの脳へ精神的なダメージを受けたらしかった。

なので風呂に1人で入れないのである。

多分だが1人では入れないとはこれは義兄に対する拒絶反応かもしれない。


「背中流してあげる」

「うん。お願い。お母さん」


私はいつまでこの様な子供の様な1人では存在なのだろうか。

何も覚えて無い癖をしてだ。


考えながら私は母親に気が付かれない様に舌打ちをした。

私は愚かな存在だなと。

そう言い聞かせつつ。

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彼女に浮気された挙句棄てられた俺は後輩女子にちやほやされ始めてしまったのですが。 アキノリ@pokkey11.1 @tanakasaburou

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