第7話 寒気

☆名木山竜星(なぎやまりゅうせい)サイド☆


何かがおかしい。

一体何がおかしいかといえばそうだな。

何か寒い。

寒すぎると思う。

俺はそう考えながら家に帰って来る。


それから自室でスマホを見ていた。

スマホを見ていたってのは...返事を打つべきかの問題でだ。

凜花に打つべきか悩んでいた。

そして暫くにらめっこして考えてから止めた。


「...アイツに今更未練とか?くだらん」


俺はそんな感じで吐き捨てながらスマホを置く。

するとぶるっとスマホが震えた。

俺は「?」を浮かべて見るとそこに四葉からメッセージが入っていた。

四葉か。


(先輩。今良いです)

(ああ。どうしたんだ。ニュース読んでたし大丈夫だぞ)

(...あの人の事ですが)

(あの人ってのは凜花か)

(そうです。...その。凜花さんは...記憶喪失みたいなんです)

(...そうだな。それはさっきメッセージに書かれていた。マジなのかな)

(マジみたいですね)


そう書いてくる四葉。

俺は(何故そう言える?)とメッセージを送る。

すると四葉は(私、凜花さんに接触しました。あの後)とメッセージを送ってくる。

マジか...。


(凜花は何か言っていたか)

(当初は支離滅裂に聞こえました。だけど...筋は通っています。記憶喪失だと思います。...それも義兄による記憶喪失だと)

(...アイツか。...須山冬(すやまふゆ)の仕業か...なら納得だな)

(その人が義兄ですか)

(名木山はあくまで元姓だな。...そうか...須山冬もゴミだな)


そんな事を呟く。

すると四葉は(私...当初は嘘だって思ってました)と書いてくる。

そりゃそうだな都合が良すぎるしな。

思いながら俺は文章を見る。


(だから嘘をここまで吐くかと思いました)

(須山冬はゴミだ。...アイツは...コンビニ強盗をしたしな)

(...そうなんですね)

(女子の身体と金しか目当てにしてないマジな屑だ。...まあでもそれだったら納得だな。...レイプされたとも言えるかもな)

(...私、失礼な事ばかり言ってますね)

(いや。普通に考えて無理だろ。こうなっているとか思わないだろうし)


そう言いながら俺は考え込む。

すると四葉が(反省しますかね)と言ってくる。

俺は(どうか分からないが...)とメッセージを送る。

四葉は考える仕草のスタンプを送ってきた。

それから数秒してからメッセージが来る。


(私はどうあれ先輩を裏切った罪は重いと思います)

(...そうだな)

(だけど一理あります)

(...そうだな。有難うな)

(私は...凜花さんと話をしたいと思います。...正直)


そう送ってくる。

俺はその文章を見ながら写真立てを見る。

そこには笑顔の俺と凜花の写真。


正直...この時は幸せだったなと思う。

何故ならアイツが。

冬という屑が居なかったから。


(分かった。じゃあ...話をしてみようか。凜花と)

(そうですね。そうしないと話にならないですね)

(四葉)

(何でしょう?)

(有難うな)


そう言うと四葉からメッセージが途切れた。

それからまた数秒空いてメッセージが。

そこにはこう書かれている。


(先輩。私...は。先輩の事が先輩として好きです)

(そう...か)

(はい。だからこそ私は先輩を救いたいって思います)

(...そうか)

(気にしないで下さいって意味です。...先輩はいっぱい頑張りましたから)


四葉はそれを送ってきてから(じゃあ先輩。お風呂入ってきますね)とメッセージ。

俺は少しだけ赤面しながら(お、おう)と返事をした。

それからスマホを置く俺。

そして数秒してからメッセージが来た。

今度は四葉じゃなかった。


(...何だ。凜花)

(...うん。その...聞いた)

(...全てを四葉から聞いた。お前は記憶が無いのか)

(そうだね。...精神面で記憶が無くなった。ショックでね)

(何故それを早く言わないんだ。意味が分からん)

(もう嫌われても良いかなって思ったから)

(つまりお前はわざと嫌われたいが為にやっていたのか)


(そうだね)と返事が来た。

僅かながらに苛立ちを感じる。

ぴきっという感じでだ。

だけど俺は息を吸い込んで吐き出した。

それから文章を打つ。


(何故相談しなかったんだ)

(義父が死んで落ち着いていられなかったからかな)

(待て。死んだってのはどういう事だ!)

(自殺した)


俺は愕然としながら(は)とだけ文章を送った。

それから凜花からは(入水自殺だよ)と送られてくる。

何でそういう事を...。

とは言ってもどうしようもないが。


(...そんな事になっていたとはな)

(私はそもそも生きて良い存在かどうかも分からないから)

(...話があるんだが。今度)

(...どんな話)

(お前との今後の関係の話)

(そう。まあそれは話した方が良いかも)


それからメッセージは(分かった。お休み)と切られた。

その後にスタンプも送ったがまるで反応はない。

大丈夫かコイツと思ったが。

どうしようもない。

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