8・魔法ってあぶない
魔力枯渇でぶっ倒れた翌日、わたしは教会でおじ様から懇々とお説教を受けていた。まぁ、当然である。
「本当にわかっていますか?今回の魔力枯渇は軽度でしたからいいものを、もしも重篤な魔力枯渇だった場合、身体は魔力の代わりに生命を紡ぐ為の力をあてようとするのです。つまり、酷い場合は死に、そうでなくても寿命を削ることになるのです。いいですか?今後は一人で試そうなどとしては決してしてはなりません」
「ば、ばぁい゙」
そう、本来であれば魔力を見つけたのを報告した後に習うはずだった魔力枯渇についての詳細。
魔力枯渇には軽度、中度、重度の三つがあり、今回のわたしは軽度にあたる。
軽度では、本来ならばちょっと頭痛がする等、少しだけ体調が悪くなる程度。今回わたしが倒れたのは一気に魔力を引き出したことにより身体の中で安全ストッパーが働いて、これ以上魔力出すなよ!と意識を落とした形らしい。
そして中度、ここまで来ると吐き気や関節のきしみが加わりたいていの場合は立つことすらままならない体調不良に。
さらに重度、こうなると身体は魔力というエネルギーの補鎮を体内でどうにかしようとするため、その人の寿命初めとした含む生命エネルギーを勝手に消費し始める。重度の魔力枯渇まで魔力を放出することが出来るほどの精神力がなければならないとはいえ、命を代償とした行為のために世間では嫌われる方法。それでも、昔はそれこそ爆弾人間みたいな感じで、戦場でそうやって大魔法を撃つ代償に戦死する魔法使いがいたんだとか。それがあまりにも惨いということで、教会を初めに色んな国がそうなってしまうような魔法の使い方を禁止している。勿論、ドラゴンだとかとんでもない魔物が出て民を守るために、みたいな状況だと英雄扱いらしいんだけどね。それでもその先にあるのは死だから、尊ばれることはほぼないという。
話が逸れたけれど、今回のわたしの無謀はここに繋がる。
ただのライトの魔法とはいえ、魔力の制御がろくに出来てない状態で行使したのはとんでもない危険行為だった。
もし、体内の安全ストッパーが働かず、締め忘れた蛇口みたいに魔法に対して魔力を注ぎ続けていたら?
想像するだけでもゾッとする。好奇心に負けたわたしは、あの時間違いなく死ぬかもしれなかったのだ。
目を覚ましたら母に泣かれ、寝てろと寝かされ、翌日教会に来て魔法が使えた!と報告して現在である。
ありがたいおじ様の説教にわたしの瞳からは止まることなく涙が溢れ続けていた。
話を聞いてどれだけ危ないことをしたのかという自覚をして改めて思う。
魔法ってあぶない。
相手が、場所が、そういったこともそうだけど、何よりも自分が。
人に習うことの大切さを改めて思い知った。
前世で言うなら無免どころか車の構造もよくわかってないのにゲーム感覚でアクセルを全力で踏んで走り出した、みたいなことなんだもの。
そりゃあこんなにも怒るわけよ。
「――はぁ、とにかく説教はここまでです。いいですね、今後は魔法は私が許可するまで私かソフィアさんの前でしか使わないこと。また、当分は魔力制御について学びます。それが終わるまでは魔法禁止です。……そして、改めて。こんなにも早い魔力感知、おめでとうございます。ユオシーちゃんは才能に溢れていますね」
ぽんぽんと優しく頭を撫でられて、嬉しいとほっこりするのと同時にまた涙が溢れる。
前から思っていたけれど、おじ様はなんだか“お父さん”って感じがするのだ。今世で父親がいないから、幼い本能が夢見てるだけかもしれないけれど。
「ひと月で魔力を見つけることができるようになるとは、本当に驚きました。貴族の子弟ですら半年ほどはかかるものです。さて、今日からは魔力制御についてですが、お勉強できますか?」
「ずびっ、うんっ、だいじょぶ…っ…」
「よろしい。ユオシーちゃんは大変頑張り屋さんですね」
悪いことは悪いと、良いことは良いと褒められるのはなんだかくすぐったい。
ふにゃりと頬が緩む。
「では、魔力制御についてです。こちらは比較的簡単になります。特に、ユオシーちゃんは先に魔法を発動してしまいましたから」
「うっ……」
苦笑するおじ様に胸が痛む。
痛いところを突かれて呻くわたしにひとつ咳払いをしておじ様の話は続く。
「コホン。魔力制御は、見つけた魔力の源から全身へと魔力を行き渡らせることから始めます。全ての魔力を自分のコントロール下に置くことで、予期せぬ魔力枯渇を防ぐことはもちろん、魔法に対しても応用出来ます。例えば、ライトの魔法も淡く照らす、強く照らすで使い分けることが出来ますし、ウォーターの魔法も水瓶一杯に出すこととコップ一杯出すことで使い分けることができます。特に、後者のウォーターは薬師の仕事をする上では大変活躍するでしょう」
「たしかに」
言われてみればそうだ。母は水薬を作る時と傷薬を作る時、どちらも同じ呪文を唱えてるけれど出てくる水の量が違う。あの差は魔力制御によって出力する魔力を使い分けていたからだったのか。
「じゃあ、実際にやってみようか。まずは魔力の源に集中して。それから、頭や手先、体の隅々にまで魔力を運ぶように。その時、一度に全部は動かせないから、まずは手のひらで掴めるくらいの、少しから始めてご覧。」
わたしは言われるがままに目を瞑り、深く呼吸をすると魔力の源へと動くように働きかける。
ひと握り分だけ、動け、動け。
………………
…………
……
あ、うごいた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます