7・ついに来たよ!魔法!(後)
「さて、これから行うのは灯りの魔法です」
「あかり」
「そう。見ててくださいね?“ライト”」
おじ様がそう言いながら手をかざすと、ぽわりと光る玉が目の前に現れる。
「これが魔法です。安全性から見て、まずはライトを覚えてから、次に水、最後に火の属性にと移っていきましょう」
「はいっ」
いよいよ魔法が使える、と興奮したわたしだったけれど次の瞬間しょんぼりとお日様の足りない植物のように萎びることになる。
「では、まずは魔力を感じるところからです」
「まりょく……」
魔力。魔力?
確かにそうか、ラノベでも大体がそこから始まってたのを思い出した。
そう、大体は確か、丹田?だっけ?おへその下?横?に力の塊が〜みたいな……それを、感じる……?
「おじ様、どうやって?」
「一番早い手段としては、瞑想ですね。体内のどこかにある魔力の源を探し出すのです。その場所は、人によって変わりますから、私がここにあると言ってしまうとかえって枷となりましょう。さぁ、目を瞑って、ゆっくりと息をして…」
言われた通り目を瞑り、深呼吸をする。
体内のどこかにある、魔力の源……源?
何か違和感的なものないかなぁ、と自分の身体の中について考えてもうんともすんともこない。
えっ、ほんとに魔力の源なんてある?って感じよ。
そうして瞑想すること一時間。
ぽん、と肩を叩かれて目を開ける。
「今日はここまでにしましょうか」
「うぅ〜…はぁい…」
「ふふふ、こうして探っているうちに、そのうちに見つかりますから。見つかってしまえばあとは簡単なのです。大変なのは最初だけですから」
「はぁい…ありがとうございました…」
どんよりと背後に暗雲を背負いながらもお礼を言って教会を後にする。
まさか、出だしからこんなにも躓くとは。ラノベとかだと瞑想したらすぐに「ん?これはなんだ?」とかなってわかるのにー!はっ、もしかしてわたし、才能がない……!?適性があっても使えないんじゃ意味ないよぉー!
べそべそと帰宅すると、ふわりと薬草の匂いが鼻をくすぐる。
「おかえりなさい、ユオシー。魔法のお勉強はどうだった?」
「ただいまぁ。まりょくがね、どこにもないの……」
「んふっ」
しょんぼりと俯くわたしの頭上に母のコロコロとした笑いが落ちてくる。なんだよぅ、笑わなくてもいいじゃんよぅ。
「むー……」
「ふふっ、ふふふっごめんなさいユオシー、ふふふっ!大丈夫よ、初日で魔力が見つけられる子なんて居ないわ」
「……そうなの?」
「ふふふ、そうよ?ママだって魔力を見つけるだけで一年はかかったわ。だからそんなに落ち込まないで?」
それはびっくり。
母はわたしが見てる限り、それはもう上手に素敵に魔法を使う。薬を作る時の魔力水を作る時も、庭の薬草畑に水をあげる時も。そんな母でも魔力を探すのに一年もかかったとは。
どうやら、この世界ではラノベみたいにすぐに体内の魔力に気づける子供なんていないらしい。母曰く、貴族様でも沢山の時間をかけて見つけるものなんだとか。
なーんだ、そっかー!そりゃわたしが一日で見つけられないのも納得だわ!むしろ見つけてたらまぁた村中の噂話のタネにされてたね!あーよかった!わたしに才能がないんじゃなかったのかー!
「ふふ、それじゃあほら、手を洗ってらっしゃいな。もう少ししたらお夕飯の準備をするから、手伝ってくれる?」
「うんっっ!」
子供とは現金なものである。
にぱーっと笑みを返した私は土間にある手洗い用の水瓶から桶に水を移すと言われるままに手を洗った。
この日のご飯は豆とお野菜のスープにパン。スープにちょっとお肉が入ってたからラッキーだ。
辺境の村の庶民の家庭のご飯なんてこんなもん。ごく稀に猟師をしてるご近所さんからお肉のおすそ分けを貰えたらラッキーなのだ。
うちが貧乏ってよりは、村が貧乏なんだよなぁ。
このままの食事だとそのうち身体を壊すんじゃないかとヒヤヒヤする。まぁ、そこは魔法を使えるようになったらだなぁ。水魔法が使えたら、村の近くの川で魚が楽に取れるかもしれないし。
どうにか動物性タンパク質が安定してとれるようになりたいわ。まぁ、魚はまだしも動物を捕まえて捌くとか、魔法が使えたとしてもわたしには無理な話なんだけどさ。
そんなこんなで魔力を見つける瞑想をするのが日課になってはやひと月。
なんてことでしょう。みぞおちのあたりに何やらモヤモヤとした不思議な何かがあるじゃありませんか?
ぶっちゃけ単純に胃もたれでもしたのかな?という疑いも全然ある。これは、確かめなくては。
好奇心に抗えなかったわたしは、モヤモヤが右手に集まるように想像しながらつい口にしてしまった。
「“ライト”」
目が潰れるかと思う程の光が目の前に溢れ、初めての魔法で魔力を全力投入するという愚行を犯したわたしは自宅の居間で見事にひっくり返った。
- - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - -
作者です。
多分今日の20時〜22時あたりにもう一話更新します!間に合えば!
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます