6・ついに来たよ!魔法!(前)
母から調薬を教えてもらいつつもロリコンに追い回される日々を過ごし一年。六歳となったわたしは教会のおじ様の「まぁ、しっかりしてるしそろそろいいかな」のひとことによりようやく念願の魔法を教えて貰えることとなった。
何故洗礼式の後すぐじゃなかったかと言うと、それはシンプルに安全の問題からだった。
魔法の使いすぎによる魔力枯渇でぶっ倒れることは勿論、火の魔法ならば火事や火傷の危険性もあるし、水の魔法で本人が溺れるかもしれない可能性もある、他の属性だって悪戯に使えば危ないもの。故に、子供の様子を見てこの子なら大丈夫だろうと判断したら教える、というのが不文律なんだとか。
ちなみに、わたしがおじ様から魔法を教わるのは単純に使える人が少ないからと、使えても教えられるほどの学がある人が少ないからだ。
これがお貴族様だったりすると、同じお貴族様出の人が家庭教師をしていて、大金を叩いて教えてもらうらしい。庶民には縁遠いお話だね!
なので、庶民に魔法適正があった場合は教会、あるいは下級貴族から平民となり冒険者となった人から教えてもらう。ただ、前者の場合はある程度栄えてる街ならば寄付が、後者ならばそこそこの給金が必要になる。
わたしの場合はここは村であり魔法適正がある人が出る方が稀、故に基本的には教会で教わるけど寄付はなし、となる。
なんでも、過去に寄付をとったらお金が無くなる故に子供に適性が出たものの魔法を習わせずにした親がいたのだとか。何が酷いって、その後大きく育った子供が興味本位で魔法を使ったらまるで制御も出来ておらず、本人は魔力枯渇で気絶、最悪なことに適性が火であった為に村中が大火事で大惨事…なんてことがあったそう。
それ以来、村の子や、街でも貧しい家や片親の家の子の場合は無償で習わせることになったんだと。
そんな説明を前説がわりに聞きながらほぇ〜と相槌を打つ。
「…………さて。面白くないお話はここまでにしましょうか。では、次に属性についてのお勉強です」
「はぁい」
いよいよ魔法についてだ!と背筋を伸ばすわたしをおじ様は苦笑いで見ながら、羊皮紙で出来た巻物のようなものを広げる。
「属性には火、水、土、風、光、闇、聖の七つがあります。火の属性ならば火を、水の属性ならば水を操ります。また、火、水、土、風の四つは基本属性と呼ばれ貴族や庶民に関わらず適性が現れやすい。それに対して光、闇、聖の三つは特殊属性と呼ばれ、適性が現れることは稀になります。とは言っても、三つのうち光に関しては比較的適性が出る確率は高いと言えましょう。逆に、聖に関しては数百年に一度現れるかどうか、と言うほど少なくなりますね。一番最近ですと…そうですね、二百五十年ほど前にいらした聖女様が聖属性を持っていらしたと伝えられています」
ふむふむ。基本属性に特殊属性、まぁ、まんまゲームっぽい感じだなぁ。ってゆーか聖女様!?そんなんいたの!?
そして私はそんな七つしかない属性のうち、基本がふたつと特殊がひとつ…うん、そりゃあおじ様もびっくりするし村の大人もざわざわするわ。ただでさえ魔法適性が滅多に出ない庶民でそれって、レアよりもレアじゃんよ。
「火や水の適性でできることは名前の通り、ユオシーは光も持っていたね?光の属性は、その名の通り光を司りながらも、同時に治癒も司っています。君は薬師の娘だからね、身近なのはそちらかな?さて、ユオシー。魔法のヒールと、水薬のポーション。どちらも傷を治すということにおいては同じだが違うことがある。何かわかるかい?」
「んえっ?ん、んー……えぇ、なんだろ。治りのはやさとか?」
「ふふ、難しかったかな?答えはね、どんな状況でも使えるのがヒール、安全な状況で使えるのが水薬だ。例えば、酷い怪我で意識を飛ばしてしまった患者がいたとして、その患者に適してるのはどっちでしょう?」
楽しそうに微笑むおじ様の言葉にうーむと唸る。
意識を飛ばしてる人に対して、か。
ポーションは飲むことで最良の結果、幹部にかけることで半分の結果を出すらしい。ということは、半分かけて意識が目覚めてからもう半分を飲ませるのが正解?
いやでも、さっきおじ様は安全な状況で使えるのが水薬って言ってた。ってことは想定は戦闘中?
「危ない場所なら、ヒール?」
「うん、そうだね。戦闘中などの切迫した状況ならば間違いなくヒールだ。そして、意識がない相手にもね。意識が目覚めるまでかけることで持たそうとした場合、そのまま目覚めることなく眠ったま逝ってしまう可能性があるでしょう?ポーションは、あくまでも飲み薬だから。かと言って意識がない相手に液体と言えど飲ませるのは危険な行為だ。故に、そういった場合は安全な場所にいてもヒールを使うという選択肢になる」
「あー、なるほど、そっかあ」
言われてみればたしかに。寝てる人に飲ませようとして、気管支に入ったら大変だわ。そう考えたら確かにヒール一択だ。
うんうんと頷くわたしを満足気に見たおじ様は、それじゃあ、と巻物を片付ける。
「いよいよ試してみますか?魔法」
「っ!やる!やります!」
やったー!座学?おわった!?
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