エピローグ

第20話 ネクスト・ワン

 服飾、時計、香水、宝石。

 あらゆる高級ブランドが軒を連ねる、ここラフィニ通り。


 大理石の建造物には光沢を帯びたブランドロゴが掲げられ、石畳の上には洗練されたファッションに身を包んだ紳士淑女が行き交う。


 ドレスにバッグ、アクセサリー。華麗な衣装を纏ったマネキンたちが、各店のガラスの内側で今日も己の美を主張する。


 そんな街並みの一角に、そのカフェはあった。

 純白の外壁に黒い飾り文字で記された店名は、Cafe Boutique.


 その店が誇る美しきショーウィンドウの内側に、舞音まねはいた。


 今日の彼女が楽しんでいるのは、真っ赤な苺がたんまり載ったパフェ。その豪華なスイーツは、モノクロ色調のショーウィンドウで、ひときわ鮮やかに照り映えている。通りをゆく人々は、どんな宣材写真も顔負けの魅力に、もれなく視線を奪われた。そして上品に苺を頬張る舞音の姿を見て、ごくりと喉を鳴らすのである。


 そんな中、一人の少女がCafe Boutiqueの前で足を止めた。彼女はありし日の舞音のように、生きたショーウィンドウを眼前にして、魅入られたように立ち尽くす。


 そのとき、舞音はふと目を上げ、窓の外に視線を向けた。

 交差する二人の視線。


 舞音はその口元に、優美な笑みを浮かべた。

 それはまるで、店外に佇む少女を誘い込もうとするかのような、魅惑的な笑みだった。


 雷に打たれたように、少女が大きく目を見開く。


 数分後。

 その少女はCafe Boutiqueの扉を引き開けた。


 カランコロン。

 ラフィニ通りに、今日も新たな挑戦者の来店を告げるベルが鳴る。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

駒井舞音は広告になりたい。 world is snow@低浮上の極み @world_is_snow

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ