12-午前四時のコーヒー・ブレイク
手のひらの中に収まった真鍮製の
――窓の外はすっかり明るくなり始めている。チャンプは最高級エチオピア産のコーヒーを啜りながら、フライパンの上の肉に火が通るのを待っていた。脂が焦げる官能的なにおいがキッチンに充満している。充分に火が通ったであろうころ、最後に強火で表面に色をつけ、皿に移す。あらかじめ煮詰めておいた香味野菜を使ったステーキソース――レシピはネットで調べた――を上から垂らしかけて、ステーキが出来上がった。テーブルマナーなど知るはずもないチャンプはフォークをそれに突き刺し、端から齧り付く。焼く前の下ごしらえとしてしっかりと包丁の背で叩いておいたからか、歯ごたえは残っているものの咀嚼するたびに柔らかく繊維がほどけていく。香り高いソースも肉の味を消すことなく、むしろ存分に引き立てており、チャンプは自然と頬が緩む。弾力のある肉を噛み締めながら、自らの口内で一つの生命が終わっていくことを、チャンプは知覚していた。
不夜城に獣 崩山 @sodom120
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