第7話

峰と話しているうちにお昼の時刻を過ぎていた。

不思議なもので特にお腹が空いていたわけではないのに昼を過ぎたと考えると急に小腹がすいてくる。

だが米を炊いているわけでもないしインスタント麺もない。

いつもなら繋ぎとしてスナック菓子で誤魔化しているが今は峰もいる。

「ちょっとスーパーに行ってくる」

そういうと峰の顔がパッと明るくなった。

「わたくしもお供いたします」

「いや、家で待っててほしい。すぐ帰ってくるからさ」

「わたくしでは力不足ということですか」

途端に峰の表情が曇る。

なんだかやるせない気持ちになってきたので「待ってて」と寝室へと向かい押し入れの中を漁る。

「あった、あった。悪いんだけどこれに着替えてくれる?そのままだとたぶん目立つから」

引っ張り出してきたのは高校時代のジャージに真新しいティシャツ。

「わかりました」と峰がその場で帯を緩めはじめる。

胸元大きくはだけもう少しで乳房がみえるとこだった。

慌てて後ろを向き寝室を指さす。

「ご、ごめん。あっちで着替えて」

峰を寝室に移動させその場にしゃがみ込みぬるめのお茶を一杯。

興奮が冷めない。峰の引き締まっていながら陶器のような肌が頭から焼き付いて離れないでいる。

茶をもう一杯というところで寝室から峰の声がする。

「――着れた?」

ちらりと寝室の方に目をやる。峰は地肌の上に直接ジャージを着こんでまたもや肌をさらけ出していた。

「み、峰さっき渡した薄い、えっと襦袢みたいなやつ。それを先に着て」

頬が熱い。こうなんども肌をみせられてはたまったものではない。

「なるほど、これが肌襦袢だったのですね」

これでどうでしょう?という峰を今度こそ信じて振り返る。

ジャージの前を閉めてはいないがさっきのと比べるとなんも問題はない。

「ここをこうして――」とチャックを閉める。

サイズはピッタリというわけでもないがダボついているわけでもない。

なんというか疲れた――。

ようやく外に出れる、と思いきや峰が左手に刀を持っている。

必要がないと言っても聞き入れてはくれない。

「いくらご主人様の頼みとはいえさすがにこればっかりは」

「うーん。そういえばその刀は峰の本体みたいなものだしな」

かといって刀を持ち歩かれても困る。

ふと思い出した。それはソシャゲにはよくある一コマや四コマ漫画のことである。

確か一度峰は式として三つ足の鴉を召喚したことがあるはず。

初期のことで半ばなかったことにされているが。

「峰。式の三つ足鴉は呼べる?」

「それならば」と髪を一本抜く。

抜いた髪が風に乗ったかと思うと鴉に化けた。

その鴉に刀をあずけ車に乗り込もうとする。

――あれ、そういば昨日は車をコンビニに置きっぱにしてたはず。

だが車はいつもの場所にある。

「ご主人様これを――」

峰がタイヤを指さす。タイヤには蔓が巻き付いておりみれば道路には引きずった跡が。

「まさか誰かが車を引きずった、てこと?」

「ええ。妖がこの箱を引きずったようですね」

妖が。なんだか背中に寒気を感じた。

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つくも! 万年一次落ち太郎 @7543

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