第5話
お風呂から上がってまたソファーに並んで座ると、さっきと同じように指を絡ませたりキスをしたりする時間が来た。
「もう、寝よっか……」
萌の言葉にただ頷いて萌に誘われるままベッドに入った。
「萌!」
僕の理性は情けないほど薄く、隣にいる萌に抱きついた。
「ゆうちゃん……、大好き」
萌のパジャマのボタンに指をかける。布生地の感触がすべすべしている。手が震えてなかなか外せない。一個ずつ、ゆっくり外していくと、白い肌が垣間見えた。すべて外し終わったとき、薄い緑のブラジャーが大きな胸を包み込んでいた。
ブラジャーやパンティーもすべて脱がした萌はあまりにも無防備で、恥ずかしげな表情を浮かべており、僕の股間のものはすっかり反り立った。
「ゆうちゃん……」
僕は持参したコンドームを取り出し、毛を挟まないように慎重に被せていった。この日のために何度も装着する練習をしていたのが役に立った。
萌の中に入れようとするけどなかなか入らない。初めてに加えて想像以上に暗くて位置がわからない。萌の手が伸びてきた。押し込むと萌が身体をくねらせた。
「ごめん、痛かった?」
「大丈夫……」
ゆっくりと奥まで入ったとき、嬉しさと喜びが入り混じった感情が爆発し、そのまま萌に抱きついた。
「ゆうちゃん、重いよ……」
言葉とは裏腹に萌の腕は僕の背中に絡ませている。
「ずっと大事にするから! 萌大好き」
「私も。ゆうちゃん大好き」
小さく喘ぐ声が耳をかすめた。顔を上げたとき、萌のお腹から唸るような音が聞こえた。萌が恥ずかしそうな表情を浮かべている。たまらなくなって唇を合わせた。
「なんだかお腹空いてきちゃった……」
ちょっと前にハンバーグを食べたばかりなのに。そういう食いしん坊なところも大好きだ。そのまま舌を絡めると萌も同じようにしてきた。
ブチッという音が体内から出た。すぐに舌から猛烈に熱い痛みがにじみ出てくる。萌が顔を離すと、口から顎に溢れてくるものが止まらない。血だろうか。生臭い味がする。
「ごめんゆうちゃん、我慢できない……」
萌の口の周りは真っ黒なものがべっとりとついている。暗くて色がよくわからない。体を起こそうとしても萌の腕が強固に絡まって取れない。そもそもいくら体をよじらせても収まらない痛みのせいで力が入らない。萌は僕の首に顔を埋めた。ひたすら痛いだけが思考を支配するなか、今度は首に何か突き刺すような痛みが襲った。萌に噛まれたのだ。
「もえ、やへてふへ」
まともに喋れない口を必死に動かして萌から体を話そうとする。でも離れない。
「やっぱり死んだお肉より生きたお肉の方がおいしいな」
萌は独り言を話すようにまた僕の首にかみついた。ブチブチという音が聞こえる。血生臭いさの中に虫臭さをわずかに感じたあと、口周りが黒い萌が二重に見えたあと黒くかすみ始めた。もうタン、タン、タン、という音も聞こえない。
カマキリ系カノジョ 佐々井 サイジ @sasaisaiji
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