相方が死んだ。

しのつく

第1話

 相方が、死んだ。怪物退治の任務に行ったまま、帰ってこなかった。


 相方とは、かれこれ5年近く一緒にいた。寮の同じ二人部屋に配属されてからは、それなりに会話もして、2人で同じ任務に向かうこともあった。


 通達があったのは、午後の8時頃。相方のために用意しておいた夕食は、とうに冷め切っていた。

 任務に同行した同僚が言うには、あいつは民間人の代わりにおとりとなって、その後怪物と相打ちになったらしい。いかにもまあ、お人好しのあいつらしい死に方だと思った。



 そう、相方は人が好すぎた。

 技術も能力も考える頭もないくせに、度胸だけはあった。そして、いつだって他人のために自分のことを二の次にしてきた。

 どうせあいつのことだ。怪物に襲われている人のことを見捨てられず、救うために自分が死ぬことを選んだのだろう。後先考えることもなく。


 別に、なにかあいつに対して特別な感情を抱いていた訳じゃない。そもそも、組織の方が勝手に決めた相手だ。

 でも、ずっと同じ部屋で暮らせば、情の一つくらいは湧くものだ。通達を受けた後、後味の悪い感情を覚えたのは言うまでもない。


 俺は、相方のああいうところが大嫌いだった。俺は何度も、よく考えて行動しろって言ってきたのに。結局、あいつは一回も直さなかった。しかも、あいつはそのことに少しも悪いと思っていなかった。

 いつだって、そんなあいつの尻拭いをさせられるのは俺だった。もう直らないものだと半ば諦めていた。でもこんなことになるなら、一回殴ってでも聞かせるべきだったかもしれない。



 でも、今更そんなことを思ったってどうにもならない。あいつが帰ってくることはない。

 お偉いさん方は早々にあいつの処理をして、明日にでも業者が部屋の整理に来る。1ヶ月とたたぬうちに相方は記録だけになって、そしてこの部屋には新しい従業員が何食わぬ顔で来て。



 そして、




 俺はこの夕食を朝までしまい込むしかないんだ。

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