第6話 能力

「あわわわ……先生……私どうしましょう。弁償でしょうか?」


「いい、いい、いいえ、大丈夫ですよ、お、おお、落ち着いてね……こんなの初めて見ました。今日はもう終わりましょう。私も判断しかねます。校長に相談してきますわ」


 先生に謝っている間にみんなは教室に戻っていた。遅れて教室に戻ると


「マヤちゃんすごーい。すぐにでも宮廷魔道士になれるよ」


「あんな魔法どうやって覚えたの?」


「マヤちゃん詠唱してなかったよね?」


 私の周りは女生徒でいっぱいになった。


「俺少しさびしいな」


 これまでクラスの人気を独り占めしていたユートリは少しひねていた。


 私はなぜ魔法が使えたのか考えた。何度考えてもわからない。ひとつ思い浮かんだのが、地球に来たら飛べるようになっていたスーパーマンだった。私もこの世界に来て過分な魔力が使えるようになったのかな?



「コホン、では2時限目は数値学です。マヤさんの教科書は明日になりますから隣のクララさんに見せてもらってください」


「はーい。わかりました。マヤちゃん見ていいよ」


「クララさんありがとうございます」


(え、えええ、ええええ!!これ中学校の教科書ではないの?)


「はい、この問題を解ける人、手を挙げて!」


 誰も挙げてない。恥ずかしいものね。私も嫌だ。


「はい」


 ユートリが手を挙げた。すごい。勇気あるんだ。


「はい、ユートリさん。前に出て解いてください」


 ユートリが10問ある数式をどんどん解いていく。


 ところが10問目でユートリの手が止まった。


「先生これは習っていません。解けません。たぶん解ける人はいないのではないですか」


「待ってください。これは……そうですね。私もすぐには解けないわ。それが分かるとはさすがユートリさんですね」


 私は2年前に見た入試問題ばかりで、ついコックリと舟を漕いでいた。最後の問題も去年習った。


「はい」


 クララが手を挙げた。


「クララさんどうしました」


「最後の問題は、もしかしたらマヤさんが解けるかもと言ってます」


「えーーー。言ってません」


「だって頷いてたよ」


「ごめんなさい。舟漕いでました」


「アハハハハハハ」


「マヤさん授業は面白くないかも知れませんが、寝たらダメですよ」


「すみません」


 クララは笑っているが悪い笑いではない。クラスのみんなも笑っているけどいい感じだ。


「ごめんごめん。ちょっと仮面からはみ出た鼻ちょうちんがおかしくて。これからも仲良くしようよ」


 クララは謝ってくれた。


「一応、聞いておきますよ。答えは分かりますか」


「え~と、ルート2です」


「計算式は書かないのですか」


「暗算です」


「そうですか。私も答えがわからないのでその勇気に免じていいでしょう。お座りなさい」


「マヤすごいね。アドリブで先生を負かしたよ」


 この学校は1時限が90分なので疲れる。当然眠い授業はなお長く感じる。


 昼食時間になった。みんなは弁当持参だ。私はよく考えたら何も持ってきてない。


 昼食くらい食べなくても死にはしないや。ユートリも目をつぶって机に座っている。ユートリも昼食抜きなんだ!


「マヤ様お待たせしました」


「遅いぞ」


「申し訳ありません」


「メリサ今日はお前か!」


「はい、マヤさんの分は私が作りました」


「俺のはないのか」


「お待たせしました。こちらでございます」


「なんだ。ゴルドンが来たのか。ナーナはどうした」


「彼女には別の仕事を与えています。今日は校長から呼出しがありまして、ついでに私がもってきました」


「まあいい。腹が減った。早く出せ」


「これはうまい。さすがナーナは俺の好みがわかっている」





「マヤ様お待たせしました。どうぞ」


「これはすごい量ですね。全部食べられません。メリサさんは食べたのですか」


「いいえ。私達最下層メイドはマヤ様の食べ残したものをいただきます」


「残さなかったら?」


「昼ご飯はありません」


「それでいいの?」


「生まれたときからそうですから気になりません」


「一緒に食べようよ」


「いいえ、そういうわけにはいきません」


「確か主人の命令は絶対でしたね。では、命令します。一緒に食べなさい」


「はい」


「一緒に食べた方がおいしいもの。それに私そんなに食べないよ」


 話しているとメリサは小学校までしか行ってないことがわかった。


「勉強よかったら一緒にしない?」


「いいのですか?」


「いいよ。私もこの世界のことを教えて欲しいから。お互いに教え合おうよ」


「はい」


「メリサは料理上手だね」


「まだまだです」

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