第11話


朝、私は目覚ましの音でゆっくりと起き上がりました。

いえ今日は特に用事は無いのですが、何というか……予感がしましてね。


そう私の唯一の友人が来る予感ですよ。

元職場の同僚で、二人でよくダンジョンに潜ったりしましたねぇ〜

っと、一応掃除しておきましょうか。

彼が来たら変なお土産をまた置いてかれますからね。


そして時は過ぎてお昼頃、私は冷蔵庫から前日の余りとかをレンジでチンしてインスタントラーメンに掛けて簡単な食事を済ませました。

そしてそのタイミングを狙ったかの様に鳴るベルの音。


「はいはい〜」


「よっすトラちゃん」


「あ、いらっしゃいランディ君」


この金髪碧眼の大きな好青年はランディ・柴田君。

私の二つ下で、会社に勤めていた時は私の後をよく追ってきましたね〜


「てな訳で今日のつまらないものをど〜ぞ!」


「ハロー!」


ランディ君の後ろから出てきたのはこれまた金髪碧眼のスッゴイイケメンさんだ。

年はランディ君より少し下かな?でもこう……雰囲気は大人びてる感じですね。


「コイツは従兄弟のパンク・シャルドネ・柴田、俺ちゃんの二つ下!」


「My name is Punk」


「これはご丁寧にありがとうございます

私は荒見景虎と申します」


するとパンク君は私と肩を組んで凄い勢いで英語で色々と話しかけてきた。

わ、私は余り英語とか得意でないのでオロオロとしてしまいランディ君に助けを求めるのですが彼はニヤニヤしてるだけでまぁまぁなんて言って家に入ってきました。

そして慣れた様子で冷蔵庫からビールを取り出し、一気に飲み干してプハーなんて言ってます。

で、それを見てパンク君はよりヒートアップして何かを伝えていますが余りの姿に困惑が止まりません。


そして十分後、パンク君は汗を拭う動作をして私の方へ視線を向けました。


「てな訳で自分、パンク・シャルドネ・柴田言いますねン

トラさんの事はランディからよく聞いとるヨ!

めっちゃええ人言うとったデ!」


「日本語喋れるんかーい!」


「ハッハッハ!」


「「ルネッサーンス!」」


ランディ君が缶ビールを手渡し、ツッコミをいれると二人して乾杯して古いネタを披露してくれた。

テンション高いなぁ〜


「あ、コッチが本当のつまらないもので〜す」


そう言ってランディ君が取り出したのは大量の缶ビールやチューハイ、それと何処かの民族が魔除けとかで使いそうな禍々しいお面だった。

ランディ君も私と似たような道具を持ってるので手軽にとんでもないお土産を持ってくるのですよね〜


「ほな、これはワイからのつまらないもんやデ」


「うわぁ……」


パンク君が手渡してきたのは何ていうのか……白衣を着た女性が机に突っ伏して足をバタバタさせてる写真だった。

何これ?


「ワイの相方のおもろいシーンやデ

まさか上層のスライムもどきに最高傑作壊されて拗ねて帰ったんヨ

あれは笑ったワ」


スライムもどきとは、スライムによく似た何かで戦闘力は皆無。

唯一出来るのは足元に潜り込んで転ばせるだけの謎の存在です。

それに負ける最高傑作とは……?


「ハッハッハ!そりゃ面白いなパンク!」


「だろランディ!」


二人して缶ビールを一気に飲み干すとダンッ!なんて勢いよく叩きつけて此方を向いてきました。


「「おかわり!」」


「え?」


「なんやトラちゃんはこれ知らんのカ〜

コレはな〜」


とパンク君が色々解説してくれました。

ネット掲示板とか、DANTUBEとかその他諸々と。


「てな訳で、トラちゃんめっちゃ今噂になっとんねン!

ツインヒーローを助けてラブアンドピースも助けて、そんでもって新種の討伐!

そりゃもうワイ等サイバーパンクともコラボしようヤ!」


「それはお断りします♪」


「疾風迅雷やネ」


私はもうあの時の様な生活には戻りたくない。

あの四人を助けたのだってたまたま偶然であって、もしパンク君とコラボをしたらあのときの様な生活に戻るかも知れません……



















国営会社「ブラックパンサー」

ダンジョンの浸透した今ではこの手のダンジョン系の会社は何故かギルドとか呼ばれます。

まぁ理由はよく解りませんが、私がサブカルチャーに精通してないと言われたのでそれが由来なのでしょう。


当時の私はダイバーギルド所属の一会社員。

来る日も来る日もノルマに追われ、ただひたすらに疲れる日々でした。


人手が足りない事と、私がダンジョン能力の持ち主だからと上からやたらと仕事を押し付けられ、時には死の淵を彷徨う羽目になり彼これ六年は超えた時でしたね。


当時のランディ君から「トラちゃんはこの会社を辞めるべき!トラちゃんが死んじゃったら泣く人多い!」

当時はまだ経験の浅かった彼の言葉に何か気付き、そして彼が一人前になったと感じた時に退職しました。


あ、ダンジョン能力ってのはダンジョンに初めて潜ったらもらえる的なアレです。


とまぁ、正直な話をしますと私の中では組織のダンジョン関係者の上はブラックなんて考えが根付いているのですよね。










「そうですね〜、でもランディ君の従兄弟なんですからもしダンジョンの中で合ったら絶対に助けますよ♪」


「ワオ!?さっすがトラちゃん♪」


私はランディ君に救われたのですから、せめて彼の家族を救えたら満足です♪

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大食い系ダンジョン探索者は配信に映ってしまう ボストンクラブ @k1993

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