未来と星
ぽわり。
第1話
「この世の中…と言うとあなたたちはどこを考えますか?
国や世界、地球、私たちが住んでいる社会。
その先に秘めているものをまだ知らないのだ。そうやって決めつけて可能性が失われていく。それに気づいていない。変わらないといけないところがまだ溢れているのに。」
暗闇の中、ぴかりぴかりと光る飛行物体。耳をすませるが音は聞こえない。静けさの中、何者かがにっこりと微笑み、何かを見下ろしている。飛行物体は少しづつ進んでいく。「託した。」と、何者かの声が聞こえる。その瞬間、飛行物体は速度をあげ消えていった。
「そろそろだ。」といい宇宙食の肉まんを頬張る、未来という男の姿があった。「最近のはよく出来てるな、うん、」そうボソボソっとつぶやくとペンを手にし何かを殴り書いた。目を擦り窓の外を見つめる。目線の先は真っ暗窓ガラスは分厚く機体は普通の人が考える宇宙船とは少し違う形だ。
未来は幼い頃からこの世の中に、いや人々の愚かさに納得が出来ていなかった。そして血のにじむ努力の末、今に至る知識を身につけ、今回の計画を遂行した。
「ハンドルオーケー、着陸」ここはまだ発見されていない星。ここに降り立った未来は目を見開いて立ちすくんだ。そこには何もないのに。けれど彼は感じていた。地球とは違う空気。ここには何かある。そして機体から機械を持ち出してきた。それは装着するとその星に合うコミュニケーションの方法がとれるようになるというものだ。…。何も見えない。音もない。しかし見える、存在する命の姿が。感じるのだ。その命達にコミュニケーションをとってみた。挨拶を。とても愛想良く返してくれた。数日一緒に過ごしてみた。食事は人間とは違う方法で栄養素を吸収している。彼らなりのルーティーンもある。しかし驚いたのは、相手を憎んだり妬んだりマイナスなことをするような命はなく、お互いにプラスな存在でいるのだ。なんて素敵なんだ。
次に向かったのは現在発見されていて生命は確認されなかった星だ。しかしそこにも命は存在していた。形や存在の感じ方、コミュニケーションの方法も全く違うが微笑ましい星だった。
そして機内に戻った彼はまたペンを握り考えた。僕も可能性を決めつけていた。地球にもいろいろな生き物が存在する。
静けさの中光る飛行物体は行きより速度をあげて進んでいく。やはり何者かがその姿を見つめている。
地球に戻った未来は執筆活動を進めていた。手にはあのペンが力強く握られている。その内容は「この世の中…というとあなたたちはどこを考えますか?…」から始まっていた。
伝えたかったことは人間の醜さ…。型にはめ込まれた生活をほとんどの人が送り、何か変えようと思った人が動いても何も変わらない現実。もがいてあがいて伝えようとしている人の苦しみ。何も考えてない人を羨む自分に気づき、考える人はそれに流されてはいけないとさらに苦しむ。映画をみても物語だと思われて終わりだと作り手の込めた想いは、願いはどこにいくのだろうか。それではいけないと、遥か遠い場所まで行き、情報を集めてきたつもりだ。人間は素晴らしい能力を持っている。まだまだ変われる。美しくなれる。可能性を可能性で終わらせるな。伝われ願い。変われ。と、書き進める。
その物語が遺言として発見されたのは何年か先のこと。その物語は本となり出版され、その年の本のランキングで上位に組み込んだ。しかし変わっただろうか。この世の中は。
静けさの中、空の上で何者かが泣いている。
未来と星 ぽわり。 @powari
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