第10話 廃屋

 無機質な巨大地下空間

そこにあるのは、無数にある透明なカプセル

通称(ゆりかご)


 膨大な数の中で、ゆりかごの一つに人間の少年が眠る。

キツネ人間がカプセルの横でPⅭを操作すると、少年が薄っすらと目を開ける。


「6分後にキャスト放流開始」室内に響き渡る音声


キツネ人間がピンマイクに答える。

「了解しました」


PⅭでさらに情報を打ち込む。

「さあ、あなたの出番ですよ。ショー君」


エンターキーを押すとカプセルが開封する。カプセルのタグに【Syo】の文字が印刻されていた。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


 せめて得意のカーレースぐらいは、一勝したいものだ。

グ~~~~

腹が鳴る、昼時か?


「ショー、そろそろ昼飯にしないか?」

「おなか空いたの?おじさん」


「おじさんは三度の食事をキチンと取っているので、腹が減るのです」

「へーーーー意外、そうだ!今から少し付き合ってよ。見せたいものがあるんだ」


「飯が食えるならね」

Syoは人の話を聞いているのかいないのか、サッサとカバンを持つと出口へ向かい振り向く

「途中で買えば?」


 先に歩いて行こうとするSyoを引き留め、コンビニで弁当とお茶を買う。

早く早くと急かす少年をなだめながら重い足を前後に動かす。しかし、いつまで歩くんだ?。


 街外れの寂れたニュータウン?跡地まで連れてこられた。

こんなところがあったのか・・・


 ぽつりぽつりと空き家が建つ。

街開発の失敗した成れの果て、全国どこにでもありそうな廃墟だな。


その中の大きめの屋敷の前でSyoが立ち止まる。

「ここだよ」


敷地をぐるりと囲む、鋳物の塀。

門扉らしき鉄くずに錆びたチェーン鎖が張られている。


チェーンをくぐり抜け敷地に入ろうとするSyoを慌てて引き止める。

「おい!勝手に入っちゃダメだろ!」


「大丈夫だよ、ほら!カビて消えかけた売家のどこに持ち主がいるの?」

Syoがチェーンを引っ張ると、カビて消えかけた売家の文字板が現れた。


 とりあえず文字板に書かれた不動産屋を検索してみると、何十年も前に倒産した会社だった。



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異世界に転生出来なかったから現実逃避する 笠原源水  @portupano

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