第16話 からすき星/蜂蜜ひみつさま
蜂蜜ひみつさんには「てんとれないうらない」を拝読してからのご縁で、その気っ風の良い作品は多くの読者達を掴んで離さない堂々としたものがあります。
今回もそんな心意気を感じる作品たちになっております。
からすき星
https://kakuyomu.jp/works/16818023214158739814
俳句 「金星」
寒月に 添うて金星 泣きぼくろ
かんげつに そうて きんせい なきぼくろ
明けの明星。美しく切ない夜の月に寄り添う最後の星。その位置が泣きぼくろのようと詠んでいます。そして迎える朝を共に抱えて消えていく。そんなロマンチックな風景が広がっていて、胸がしめつけられますね。
金星は月と寄り添う最後の星。ですが、新しい朝の誕生を最後までつきあってくれる星でもあります。わたしたちに終わりが来るとしても、次の世代の誕生を優しく眺めてくれるような星。人に愛が尽きないように、星もまたわたしたちの子孫を優しく見守ってくれるのかもしれません。
短歌 「星の砂」
月夜蟹 そぞろに歩く 星の砂 ほれ この通り たわいもなしや
つきよがに そぞろにあるく ほしのすな ほれ このとおり たわいもなしや
潔さの中に、開き直りに近い強かさを感じます。月夜蟹=中身がないと詠いながら、「ほれ、ご覧の通りよ」と何も持たぬ自分に恥じることなく堂々と立っている姿が想像できて、なにか励まされているような気持ちになりました。人は死んでしまえばあの世に持っていけるものなど魂くらい。蟹に肉があろうがなかろうが、こまけぇこたぁいいんだよ!! と言わんばかりです。いいですね。裸一貫、人がどんな目で見ようが「どんなもんじゃい」と堂々としていたいものです。
いただいた解釈の中で③沖縄の星の砂のビーチのイメージがわたしは好きでした。ナンパされているビキニの水着にダボTを着た女の子を月夜蟹と見立ててみましたが、いかがでしょうか。
詩 「霧笛 (海に沈む星)」
靄から濃霧へと濃くなっていく詩になっており、時間の流れと視界の濃淡に動的な感情があるように思えます。
仕事がはねる時間ともなれば
否が応でも
湿度を増して
二連目の部分。仕事が終わってやれやれになるのかと思ったら、靄から霧に「濃く」なっているのです。どうやら仕事の悩みではなく、もっと私的で根本的な感情であると理解しました。そこに何を重ねるのは読者次第なのでしょう。
うちっかわを持て余す
この表現いいですね。人柄と作風の滲ませています。
海の底に沈んだ
星々の嘆きが
「海の底に沈んだ星々の嘆き」というのは解説にもある通り、各人の持ちうる感情の総体であるとおもいますが、「歌枕」という言葉の解釈が難しいです。犀川にはぱっと浮かびませんでした。
船が行く
ここ、ものすごい余韻があって好きです。濃霧の海はわたしたちの意識とリンクしていて、どこか別世界の映像を見ているようなぼんやりとした中で舟が漂い、わたしたちは意識を失っていくのでしょう。それまでの苦しみから少しだけ解放されたような気分になれます。
素敵な作品たちでした。ご参加いただきまして、ありがとうございました。
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