第26話予期せぬ転機芸能界への誘い

「…ってとこでどう? 後日電話くれたら。」


事務所社長の菅原さんが、両手を顎で組んで言う。グイグイ来られるかと思ったら、意外に落ち着いていた。そのせいか、この社長の人は、少し信用できるかなと、考えた。


「はぁ…」


芸能人つまりタレントになるか。色々大変なんだろうと思うとため息が漏れた。


水着とか着せられるのか…そんなスタイル…悪くはないか。そう思って、自分のお腹を軽く見た。


「あんまり乗り気じゃないみたいだね。」


菅原さんが寂しそうに言う。でも慣れてるのだろう。やる気にさせるのが俺たちの仕事。ってやつかな? 表情は平然としていた。


「まぁ…普通なら男性アイドルに会えるとか喜ぶんでしょうけど、あんまり俳優さんとか興味ないんで。」


ちょっとはっきり言い過ぎたかなと、隣の霧島さんを見つめる。微笑みが返ってきて、私はそれに安堵した。


言い過ぎだろうと、自分はこう言う性格。文句言われたても、変えるつもりはない。


「いいね、身持ちが硬いって事じゃん。まぁ今回あんまり勧誘とかしても、胡散いだろうからさ、バスケの話ししていい?」  


話を変えきた。このおっさんやる! そう図星だ。このまま芸能界入ると、こんな旨みがあるよとでも言われたら、私の不信感は高まったろう。



「良いですけど、確かに胡散いので。」


正直者は救われる…そう、嘘ついてもしょうがない。だって見抜かれそうだし。でなかったら社長失格だから、ここは、辞めた方がいいって思っちゃう。


そう考える私は、結構頭良いのかな、と自惚れて、笑みが溢れた。


「はっきり言うね! 俺バスケ部だったから白熱した試合見て、気持ちが昂ったというか…まぁそれで試合観てたんだけどね。」


同じバスケ部! そう! 白熱した試合だった。楽しかったけど、かなりハードだった


「私もバスケ部でした。今は辞めちゃいましたけどね。」


私は髪を触りながら言う。


「人間関係かな?」


鋭い! 良いね社長! 


「面接ですかね! 人間関係疲れましたねー。勉強に集中したいからですけど。」


「はは、これは…面接じゃないとも、はいとも言えないけど、君を取ることは、俺もう決めてるからね。」


だからリラックスしていいって事ですね。わかりました。


「それじゃ…いい返事期待してるから。」


菅原さんが、椅子から立ち上がった。


「そうですね、前向きに考えておきます。」


私は帰って名刺を調べてみる事にした。いや…その前に鏡見た過ぎる…自分の顔を見たい衝動に駆られた。


その後は親と相談しなきゃ…なんて顔をするかな? そしてどう言うことを言うか。


…あなたねぇ、騙されてるわよ、何か詐欺とかじゃない…かなー? 言いそう。


それとも…でしょうねー! 私の子供だもん。


ぷぷ…そっちも面白い。お父さんは…へーそうなんだ、いくら貰えるの? とかか?


あはは…現実主義すぎるか。


もし芸能界に入ったら…いや…テレビに出たらきちんと喋れるだろうか? そもそも喋ってもカットされるだろうか?


マイナス面ばっかり考えちゃ駄目だな。プラス面も考えよう。


例えば〜喋ってるだけでお金がいっぱい貰えるとか? ああ、それは良いな。


ひとまず、後ろで見張っている、友達に報告してやるか…そう思い友達の元に向かった。

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紬ちゃんの青春日記 タカユキ @takayuki007

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