第25話スポットライト:未知への第一歩

「それにしても、みんな負けず嫌いだよね〜。」


両手に手を当てて、仁美ちゃんが言う。


「1番負けず嫌いのひとみんが言う?」


口に手を当て、紗理奈ちゃんが笑って言った。


「いやいや、私は違うから。負けず嫌いならそもそもハンデ付けないって。それで、次卓球する?」


疲れた表情で仁美ちゃんがみんなに聞いた。


「殺す気? 無理無理。もうバスケで死に掛けてるんだから…盛り上がるだろうけど、私もう限界なんで。3人はどうする?」


私は手を振って、拒否した。これは、芸人さんが、凄い無茶やらされて、もう一度違うのやりましょうかと、プロデューサーに無茶振りされてる様なもん。


この前テレビで見た。え〜勘弁して下さいって、言ってたけど、今まさにそれ!



絶対やらん。こう言うのは、感動して終わりでいいのよ。


「それじゃ私は、帰るね。今日はありがとう楽しかった。」


私は持ち物を手に掴んで、帰り自宅を始めた。



「私も疲れた〜。今日はもうお開きにしよ〜。つむたんに何回も抜かれた。自信なくすぅ。」


紗理奈ちゃんが膝に手をつきながら苦しそうに言う。


「私の倍抜いといてそれ言う? スリーポイントも何回も決めといて、あんた何点取ったのよ? 自信無くすだなんて、よく言うわ。」


呆れてため息を吐いた。


「はは、それにしても、泉ちゃんシュート1回も外さなかったよね。100%のシュート力…バスケの才能あるよ。やったら? バスケ」


仁美ちゃんがバスケ部でもないのに、勧誘した。そこは、紗理奈ちゃんの台詞でしょ。


「紬ちゃんがバスケ部入るなら、私もやりますけど、そうじゃないなら、やらないです。それと、紬ちゃんもシュート100%成功してましたよ。」


お前ーどんだけ私の事好きなんだよ! 恥ずかしいがな。


「はは、いずみん、つむたんのこと好きすぎ〜。負けないけどね、つむたんはいずみんには、渡さないから!」


紗理奈ちゃんまでー! 頭を抱えて、穴があったら入りたい心境。仁美ちゃんが爆笑している…ああー。


「すみません、バスケの試合感動しました。いやー、白熱した試合でしたね。」


なにやらチャラそうな、おっさんが声をかけて来た。


ナンパか? ナンパなのか?  しかし歳が違いすぎるんだけど。


「そうですね、疲れましたが、楽しかったです。感動してもらってどうもです。」


警戒しながら、ぎこちない笑顔で言った。

褒められてるので、無視する訳にもいかないので社交辞令で私は言った。


「ええ…あっ…いきなり話しかけてすみません、実は私こう言う者で。」


おっさんが鞄から名刺を取り出して、私に渡してきた。見ると芸能事務所社長、菅原克と書いてあった。


うわっ胡散くさ、って顔に出ちゃったかな? 若干引き気味な表情がバレたか、内心ヒヤッとした。


「いやー、小さい所の社長やらせてもらってるんだけど、バスケしてる姿が素晴らしいと思って、是非うちの事務所に入って貰いたいなと思って声を掛けさせて貰ったんだけど、どうかな? 少しお話ししてもらえないかな?」


こっわー。中学生にいきなり何言い出すのこの人…ってそもそも私じゃないか。泉ちゃん狙いだろう。


疑いながらこの人を見ていたら、隣に女の人が近づいて来て、隣に立った。


「ごめんさいね、いきなり。怪しいおじさんとお話しなんて嫌よね? 私副社長の霧島茉都香と言います。まずは私とお話ししましょう。」


女の人がにこやかに名刺を差し出して言った。

…どうやらガチらしいね。

私は、振り返って後ろの3人を見た。みんなキョトンとしていた。泉ちゃんと目が合い、彼女が私の前に庇う様に立った。


「紬ちゃんに変なことしないですか? 私もついて行きます、良いですよね? 紬ちゃん芸能人になるの?」


泉ちゃんが目の前の事務所関係の2人に言って、私に先走った事を言う。


「あの…多分泉ちゃんを勧誘してるんだと思うんだけど、泉ちゃんは、相変わらず天然だね。」


私は微笑んで、彼女の肩を軽く叩いた。


「えっ? いや君にだよ? 今勧誘してるの僕…ふふ、君面白いね、ますます気に入ったよ。話聞きせてって言ってるのに、別の子勧誘…あはは。」


えっ…どう言う事? 私? なんで?

どう考えても、泉ちゃんの可愛さ、スタイルの良さ。何をとっても敵わないんですが。



「社長ツボにはまっちゃったね。良いねー。紬ちゃんで良いのよね? 紬ちゃん今からでもうちの事務所入ろっか?」


霧島さんが、話をする前に、私の事務所入りを決めていた…私は頭の中が真っ白だ。


「あの…どうして私を? 真意が分からないですり」


「どうしてって、どこから見ても美少女だし、それでいて、愛嬌がある顔をしてる。顔立ちの良さとかそう言うんじゃない、個性のある顔! 表情も生き生きとしてるし。」


うーん? 確かに、言われてみれば…愛嬌があるんだよ、紬ちゃんはー。とかは言われるけど…個性的な顔…それ褒めてる?


「はい! 紬ちゃんは、どこから見ても美少女です。本人に言っても認めないんですよー。やっと認めてくれる人がいて嬉しいです。」


ガチなんかよ! …にわかには信じれん。


「今日は入るか決めないですけど、話だけなら。」


うーん勉強疎かになるし、あんまり入る気はしない。それでも、話しぐらいは聞こうと軽い気持ちで私は言った。

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