第24話フィナーレ・心が一つになる時

泉ちゃんからパスを貰い、すぐに紗理奈ちゃんが迫ってきた。


泉ちゃんにパスをする。仁美ちゃんがディフェンスに入る。泉ちゃんのボールを狙う。


2人とも凄い気迫。  


仕方ない、ここは戻して貰う。


泉ちゃんが、ボールを戻す。さすが〜阿吽の呼吸ね。


さて、ボールをキープしてと…くっ、速い…こっちは疲労困憊だってのに、まだ疲れないか!


泉ちゃんにまたパスをする。ここで紗理奈ちゃんが猛ダッシュを掛けて、泉ちゃんに向かって行った。


ボールを戻せば…後はこのままゴールまで突き進む。


紗理奈ちゃんが、泉ちゃんからのパスをカットした!


狙いがバレてたか。ボールを取り戻す気力が私には…そのままシュートに行った。


決まった…見てるしなかった。


だけど、無駄じゃない…時間は過ぎてる。


6分経過。あと4分で点差は3点差。


スリーポイントさえ気をつければ大丈夫。


私は拍手をして、よし行こう! と泉ちゃんを励ました。


泉ちゃんからパスを貰い、少しドリブルすると、紗理奈ちゃんが襲ってくる。


こいつ〜なんちゅう体力。その圧倒的なスピードに対応出来ず、すぐにスティールされた。


泉ちゃんがカバーに入った。それを交わして、シュート…決まってしまった。


目にも止まらぬ彼女の速さに、呆然としてしまう。


一点差…まだ1分経ってない。残り3分40秒か。


泉ちゃんからパスを受け取り、ここは、ボールキープに専念した。


紗理奈ちゃんの表情を見ると…かなり疲れが表情に色濃く反映されていた。


やっと疲れて来たか。でも攻められない。


気持ちで負けたら駄目だ。そう思い私は、紗理奈ちゃんとドリブル勝負に行った。


紗理奈ちゃんがすぐには取りに来ず、しかし、しっかりと私にマークしていた。


私はバックチェンジ…身体の後ろで、ボールを持ち替える。


進行方向を変え、抜きにかかる。


良し! 抜いた…駄目だ、スピードが遅い、取られた。テクニックは良かったけど、身体がついていかなかった。


それでも私は、紗理奈ちゃんに食らいつく。


私も遅くなったけど、紗理奈ちゃんもそろそろ限界が見えてきた。お互い一歩も譲らず。


膠着状態の中背後から泉ちゃんがカバーに入りにくる。


紗理奈ちゃんがそれを見て、激しく動いた。


真っ直ぐではなく横に移動した。追い付けない

…! ここでスリーポイントシュート…しまった…試合が決まる。


唖然としてボールの行方を見守った。

ボールがネットに…僅かに逸れた!


シュート体制が微妙に悪かったからだろう。焦りと疲労感からに違いない。


それを仁美ちゃんが、リバウンドしてシュートして決めた。



24対25…ついに逆転された。


残り時間2分。


ここで泉ちゃんに声を掛ける。


「こうなったらもう、賭けに出るよ。泉ちゃんに託す。仁美ちゃんを徹底的にマークして、奪い取るぐらいにね。私は、紗理奈ちゃんと勝負に行く。今度は、抜いてみせる。」


彼女の肩を叩いて、親指を立てウインクした。


「分かりました! やってみます。紬ちゃん…勝とうね!」


笑顔で彼女が言う。勝とうね…か。泣かせんなよこいつ〜。


「よし行こう。」

気を取り直して泉ちゃんからパスを貰い進んで行く。  


さぁ紗理奈ちゃん、勝負!


「抜かせないんで。」

息を切らしながら紗理奈ちゃんが獲物を狙う、ヒョウのような目でボールを見据えた。


ドリブルで紗理奈ちゃんを抜きにかかる。

取れた! 上手すぎるこの子。


だけど、やはり紗理奈ちゃんも動きが遅い。すぐに追いついた。


「抜かせないんで。」

さっきの言葉をお返しします。

私は笑顔で伝えた。


紗理奈ちゃんが、仁美ちゃんにパスをした。

泉ちゃん頼む…仁美ちゃんを抑えてくれ。


そう願いながら2人を見つめた。泉ちゃんからパスを貰うそのつもりで私は、足取り重く、ゴールに向かう。


仁美ちゃんが、泉ちゃんを抜きにかかる。抜かれた! それが、テクニックの差を感じさせた。


仁美ちゃんがそのままシュート体制に入り、泉ちゃんが、シュートコースを塞ぐ。


外れた! 

「リバウンド!」私は大きな声で言った。


ポジショニングは、仁美ちゃんが上手かった。それでもジャンプの高さは、泉ちゃんが圧倒的だった。


取ったー。 泉ちゃんからパスが来た来た! 

信じてたぞー。私は頬が緩むのを感じた。


これで逆転…紗理奈ちゃん速い。追いつかれそうになった。まだそんな力が残ってるなんて。


駄目だ。追いつかれる…一か八か…私はシュート体制に入った。


スリーポイントシュートを放った。リバウンドでスピード勝負を紗理奈ちゃんと、するつもりで打った。


だけど、私には分かった。入る! 完璧なフォームだ。うぉーし! 入ったー。


「泉ちゃん! 私も点取ったぞー。見てたか!」


私は喜びを爆発させた。


だが喜びも束の間、仁美ちゃんから紗理奈ちゃんがボールを受け取り、ものすごい勢いでゴールに迫ってきた。


あっさりと私は抜かされ、スリーポイントシュートを紗理奈ちゃんが放って、無常にもゴールネットに突き刺さった。


27対28…残り時間は、たったの一分。


「泉ちゃん、もう一分、守りは捨てよう。攻めるのみだよ。」


「はい…もう私泣きそうです。負けても良いとすら思ってしまうぐらいに…紬ちゃん私囮になるぐらいしか出来ないけど、紬ちゃんに託すんで、紗理奈ちゃんを抜いて下さい。」



「こら、泣くのまだ早い。勝ってから泣くぞ。絶対抜く、見とれ。」


私は、泉ちゃんと誓って、ゴールに向かって行った。


紗理奈ちゃん最後の勝負だ。まさにラスボスって感じだよ。限界はお互いに過ぎてるよね。


なら、最後は根性勝負じゃー!


紗理奈ちゃんが目の前にいる。私は最後にダブルバックチェンジで勝負に行った。


失敗率も高いけど、これで抜けなきゃ無理。


彼女と競り合い、紗理奈ちゃんが体勢を崩した隙をついて、抜いた。


勝った! 心で勝利を確信した。突き進んでゴールに向かいシュート体制に…その時目の前に仁美ちゃんが立ちはだかった。


くっ…あと少しなのに。仁美ちゃんに取られてしまった。


油断してしまった…仁美ちゃんがパスの体制に入ったところを、私はそうはさせないと、それを防ぐ。


残り時間があと15秒…私は仁美ちゃんから奪いに行く。よし…取った。


ヴァイオレイションなしでやってるから、助かった。もしあったら、完全に向こうに有利だったろう。



ヴァイオレイションとは、24秒内にボールを保持したら、その間にチームはシュートをしなければならない。


紗理奈ちゃんが、やはり追いついて来ていた。一難去ってまた一難…


うぉー。くっ、10秒。また紗理奈ちゃんとドリブル勝負か…抜けない…背後から仁美ちゃんがいるのを感じ取った。


やばい完全に囲まれた。だが抜く! 

無理だった…向こうが勝っている現状、無理にしたらファウルを取られる。


キープするのが精一杯だった。終わった…残り4秒…ん…紬ちゃんと呼ぶ声が聞こえた気がした。

…そうだよ、私は1人で戦ってんじゃない。


私のパスの上手さを舐めるな! パスだけなら、紗理奈ちゃんより上だ!


残り2秒、相手が勝利を確信したのを見て、私は泉ちゃんに糸を通す様に紗理奈ちゃんの、肘下からパスを送った。


シュー! そう心で呟いた。残り1秒…まるでプロのシュートを見ている様だった。

泉ちゃんの綺麗なフォーム…天性の才能だろう。


土壇場で紗理奈ちゃんを超える、シュートを泉ちゃんは放った。


シュポッと音が聞こえた。決まった…ブザーがなり29対28で試合は終わった。


ただの公式試合でもなく、ハンデありの試合だ。それでも私は涙を浮かべて、泉ちゃんの元向かい、ハグをして、喜び、彼女を褒めた。


「泉ちゃん勝った…ね。最後に決めるなんて、このこの。」


私は彼女の頭を何度も撫でた。


「紬ちゃんのパスが良かったんです。ありがとうございます〜。もう…駄目、泣きます。」


その時拍手が沸き起こり、紗理奈ちゃんと仁美ちゃんが駆け寄って来た。


「勝利おめでとう! そして負けたー!」


紗理奈ちゃんが、勝利を讃えてくれた。


「良い試合ありがとう。お疲れ様!」


仁美ちゃんが、労ってくれた。


こうして、バスケの試合は、終わりを告げた

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