第23話限界を超えて
ゆっくりと仁美ちゃんと紗理奈ちゃんがパスを交互に回していた。
泉ちゃんが、作戦通りに、紗理奈ちゃんにつく。徹底マークだ。
私は仁美ちゃんをガッチリとマーク。さぁ来い。
とは言え…さっきの猛ダッシュがかなり負担だった様だ。あまり激しい動きはもう出来そうにない。
仁美ちゃんが本気でやれば抜かれるかもしれないと、軽くため息が漏れた。
紗理奈ちゃんが、泉ちゃんを突き放しにかかった。
センターサークルを超え、ゴール付近に近づく。
それを見て、仁美ちゃんが猛ダッシュをかける。私もそれを追う。
紗理奈ちゃんが、仁美ちゃんにパスをする。
ぐっ…足が…仁美ちゃんの動きについて行けない。パスが通ってしまった!
くそっ…だけど抜かせない!
仁美ちゃんがドリブルで突き放そうとする。私は、それに必死に喰らいつく。
抜かせない…2分経過した。仁美ちゃんがパスをしようと、視線を外す。
が…それは罠だった。パスではなく、シュート体制に入った。
私は、それをブロックしようと、しかし疲れからか、足がスリップし、仁美ちゃんとぶつかる。
しまったー。シュートファウルだ。私はボールネットを見つめた。
…入ってしまった! なんて事…とんでもないミスがここで出てしまった。
私はそれでもすぐに気を取り直し、仁美ちゃんの心配をして、謝った。
「紬ちゃん大丈夫だよ。紬ちゃん相当疲れてるね。普段しない様なミスだし。中止する?」
仁美ちゃんが、心配そうな目で私を見つめる。
そう言う仁美ちゃんも、かなり疲れてそうだ。
私はすぐに首を横に振った。
「冗談! 久しぶりにこんな楽しい試合してるんだから、しっかり決着はつけるよ!」
微笑んで私は息を切らしながら言う。
仁美ちゃんが頷き、フリースローをする為、ボールを抱き、フリースローラインに入った。
シュート体制だから、フリースローの権利は2回ある。ここで2回入れられば、4点取られる。
泉ちゃんは、呆気に取られている。
紗理奈ちゃんは、さすが経験者。落ち着いている。
仁美ちゃんがシュートする。ゴールネットにボールが刺さって、綺麗な音がした。私は、拍手しそうになって辞めた。
敵ながら上手いね。これはもう一本決まるかな。
紗理奈ちゃんがボールを拾って、仁美ちゃんに渡す。
2回目のフリースロー。固唾を呑んで見守る。
そうだ、外したら、すぐにボールを取りに行かないと。
仁美ちゃんがシュート…外した! 惜しい、少しずれた。
それをみんなが拾いに行く。紗理奈ちゃん速い。あっという間に、ボールを拾い、すぐに仁美ちゃんにボールを回す。
くっ…こいつら…スタミナが無尽蔵? ちょっとは疲れなさいよ! まったく。
仁美ちゃんがループシュートを決め、2点入った。
24対17…一気に7点差に追い上げられた。私のミスで。
「紬ちゃん、何が起きたんですか? 一瞬で5点取られました!」
泉ちゃんが怪訝な表情で言う。ちょっと! 悪気のない言葉が私の心に突き刺さる。
「私がファウルしたせい。ごめんね、疲れでミスった。」
私は頭を下げて謝った。
「ああ、大丈夫です。5点早技過ぎてびっくりしちゃっただけなので。ミスは、私です。紗理奈ちゃんを抑えておけなかったから。」
「それこそ気にすんな。相手は、バスケ部のエースなんだから。押さえ込める方がおかしいって」
ほら、始めるよと、泉ちゃんを促して、攻め始める。
くっうぅ…体が重い。限界デス。はぅ〜ヤバい。泉ちゃんにパスをする。
「パスしながら進もう。」
私がそう言って、泉ちゃんが頷く。
どうやら、相手の2人もだいぶ疲れてる様に見えた。
仁美ちゃんの動きが鈍い。紗理奈ちゃんは、体力温存だろうか? こちらに歩いて向かって来た。
2人と距離が近づく。
紗理奈ちゃんと泉ちゃんの勝負だ。すぐに紗理奈ちゃんが泉ちゃんのボールを取りに行く。
泉ちゃんが渡すまいと、手にしたボールを頭上に掲げた。
そして、手を下に下げる。それを見越したかの様に紗理奈ちゃんがボールを弾いて、奪った。
紗理奈ちゃんがダッシュをかける。それを皆が追う。
やはり仁美ちゃんの動きが鈍い。もちろん私も。一瞬こちらを見た紗理奈ちゃんが、ダッシュのスピードを緩めた。
4分経過。あと6分で試合終了だ。7点差か。あと1分で紗理奈ちゃんがシュート出来る権利を得る。
紗理奈ちゃんは動きを辞めた。泉ちゃんが紗理奈ちゃんに追いつき、ボールを奪おうとする。
だけど、それを軽くいなしている。あと1分時間稼ぎか。
しかし…仁美ちゃんに回されるのもキツい。
とは言え、紗理奈ちゃんが1人で攻めてきても…どっちにしてもキツいか。
そして1分が過ぎ、試合開始から5分経過。
紗理奈ちゃんがシュート体制に入る。泉ちゃんは、ファウルが怖いのだろうか? 多分私のミスを見たせいで、一瞬動きが止まった。
紗理奈ちゃんがそれを見抜いていたのだろうか? シュートが決まり、24対19点…残り5分で5点差になった。
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