第12話「自分、故郷へ帰ります。」

それは唐突に起こった。ガロウがいくら呼びかけても返事をしないどころか目覚めもしないのだ。そして、体は冷たく氷のよう。肌も青白くなっている。丁度本で見たのと同じだった。そう、これは・・・死だ。


「・・・蘇生魔術・・・」


そう思って、覚えた蘇生魔術をかけてみるがガロウは目覚めることは無い。そう、彼は天寿を全うしたのだ。


「ガロウ・・・幸せそうな寝顔しやがって・・・」


少し笑みを浮かべたまま彼は今でも起きるのではないかと思うくらい静かに眠っていた。・・・モンスターと人間では時間の感覚が違う。それを忘れていた。俺にとっての数日は人間にとっての数年だったのだろう。通りでガロウが少しづつ衰えていたわけだ。人間は歳をとるとどうしても機能が低下するのだと言う。それは冒険者や勇者でも例外ではない。


「ガロウ、すまねぇな。俺はもっとお前といれるもんだと思ってたよ」


この感情はなんだろうか、寂しい?悲しい?虚しい?いや、きっと後悔だ。もっと話しておけばよかったこうしておけばよかったと頭の中でグルグルと思考が巡っている。その時、何かが頬から滑り落ちていった。


「・・・ハハッ、モンスターも泣くのか」


涙だった。たった一滴の涙。それでも泣いていると言うには十分だった。しばらく、俺はガロウを見つめたままでいた。しばらくしてようやく動き始める気になった。教会へ彼の遺体を持って行き、彼が安らかに眠れるようにと頼んだ。後のことは教会がすべてやってくれるとのことだったのであとは任せて教会を去った。この後、どうするか考えた。魔術師として登録してあるから容姿については何か言われることは無いだろう、このまま冒険者として続けるのもありかもしれない。だが、そこで真っ先に思ったのだ。


「ガロウがいなければ何も面白くない」


俺はガロウといることが楽しかったんだとそこで初めて気が付いた。だから俺が取った行動は自然だったのだろう。俺の足は沼地へと向かっていた。沼地に辿り着いてから一体何日が過ぎたのだろう。冒険者が来ることもなく、同族のモンスターが姿を現すこともない。1人で、独りだった。昔を思い返す。始まりの出会い、そこから始まった2匹と1人の冒険。色々なことを知って、色々なことを学んだ。


「・・・林檎、食いてぇなぁ・・・」


誰もいない場所で俺はそう呟いた。

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これが俺達のモン生だ! @tryuu01

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