<4> 可愛いじゃねーか

「どう? 大丈夫かい?」

「うん、まだ少し痛いけど、ゆっくりなら歩けるわ」

「そっか……お、いたいた! 洋、妹の結花と梨花だぞ」

「だぁー……(ふーん)」




ガラスの向こうにこんなにたくさん赤ん坊がいる……

昨日は満月だったからな、たくさん生まれたのかもな

でも、結花と梨花?

……なんだよ、ほかの赤ん坊と比べると二人ともスゲーブスじゃん




「ふふふ、あなた見て! 洋、じーっと結花と梨花を見ている目つき」

「あははは、なんだか驚いてるみたいだなぁ。ガラスに両手をついてさぁ、赤ん坊でもこんな真剣な顔するんだ?」

「洋もお兄ちゃんね。妹たちを可愛がってあげてね」




はぁ〜? そんないきなり兄貴だからって世話を押し付けるのかよ?

母ちゃん、それって虫が良過ぎやしないか?





「あははは、ママを見てキョトンとしてる。洋に通じたのかな?」

「だぁ、だぁー、だー(しょうがねーだろ。母ちゃんに頼まれたら嫌とは言えないよ)」




ちぇっ……わかったよ

少しヤキ入れて可愛がってやろうじゃないか、ひひひ




「あ、ほらほら、結花がアクビしたわ」

「おお! 大きなアクビだね、あ! 一緒に梨花もアクビしてるぞ」

「まぁ、双子だからかしら、二人だけに通じ合う何かがあるっていうけれど……」




もう、たかがアクビくらいでそんなに嬉しいのか? 親バカにもほどがあるぜ

俺だってアクビくらい出来るって




「ふぁ~はふぅ」

「あははは、洋もか?」

「だぁ~、だー(見てよ! 俺だってアクビくらい出来たろ)」




「ほ~んと、洋が生まれた時とそっくりね。女の子なのに」

「ああ、どっちも美男と美女だな」

「だぁ? だぁー、だー(似てねーよ? あんなしわくちゃのヘチャムクレ)」



『お兄ちゃん! 結花です、よろしくね、こっちが妹の梨花、よろしくね』



え? なんだよ? お前ら話せるのか?

梨花はどうなの? なんか言ってみろよ


おい、結花! おーい、なんとか言えよー



「なんだか、洋が大人しいわね」

「うん、兄貴の自覚が出てきたのかな?」

「洋はきっといいお兄ちゃんになるわね、ね、洋」

「……だぁ、だぁー、だぁ、だー(……結花と梨花か ……ふん! けっこう可愛いじゃねーか)」



                     赤ちゃんは見ている END

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赤ちゃんは見ている 白鷹いず @whitefalcon

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