SNSは意見の増幅器である。


 巷に衝撃を与え続けるあの事件。

 漫画家のボイコット騒動にまで発展したあの事件は、一体どのようにして起こったのか。

 第三者からの冷静な目線で評した一作。



 事件に関してまったく見識がない人でもわかるように、簡単な経緯・ポイントが書かれてあるのが有難かった。
 書かれている意見も、つい出てしまいそうな感情的なものからは距離を取っていて、とても読みやすかった。

 一通り読んでみた感想であるが、思ったよりも複雑な問題だった。
 こいつが100%悪い、あいつこそ黒幕、みたいに断言できるものじゃない。

 強いて論じられる点があるとするなら、作者様の仰る通り「SNSは扱い方次第では凶器になる」くらいか。
 SNSは意見を増幅させる。それも二倍、三倍とかでなく、二乗、三乗といった具合に。
 あっという間に個人ではどうにもできない規模に広がるし、その意見も当初からはかけ離れた極論になっていることも多い。
 ほんの少しの遺憾が、殺意にすら化けてしまうのだ。今までの実績や人間性が吹き飛んだ、善悪二元論の世界である。

 SNSは精神の戦場なのかもしれない。事情も経緯も違う人たちが交わる混沌のるつぼだ。
 大多数の利用者は「匿名」というバリアによって観客でいられるが、そうもいかない人達は流れ弾に当たらぬよう、頭を下げなくてはならない……

 世知辛さを感じる、そんな話だった。