第37話 ふっふっふ油断してたね…?
「俺らで勝負しねえ?」
「勝負?いいね!面白そう」
午後ショッピングモールに映画を見に行くという白鳥さん達とは別れて、僕たちは何をしようか考えていたところ竜胆さんからこのような提案を受けた。
午前の二人協力プレイもよかったけど、午後からは趣向を変え竜胆さんと戦ってみるのも面白そうだった。
話し合いの結果、竜胆さんとは五本勝負をすることになった。
五回なんらかの競技で争い先に三本取った方の勝利だ。
「罰ゲームもあった方がよくね?」
「じゃあ…負けた方が勝った方の言う事を何でもひとつ聞くっていうのは?」
「えッ」
「……えっちなのはダメだよ?」
「わ、わかってる。当たり前だろ」
期待、したのかな。
竜胆さんは動揺を見せていた。かわいい。
「そ、そうだなこういうのはどうだ?じゃんけんで勝った方が毎度戦う競技を選べるっていうのは」
「いいね」
ということでさっそくじゃんけんぼん!
一回戦目の結果は僕はパー、竜胆さんはチョキ。
勝った側の竜胆さんが僕と争う競技を選択する。
選ばれたのはピッチング(的当て)だった。
午前のバッティングの様子を見るに竜胆さんは野球が大の得意そうだった。つまりは本気で僕に勝ちに来ているということだ。
「おとなげなーい」
「うっ、勝負ごとなんだから仕方ねえだろ…」
花森さん達とのバスケの時もそうだったけどこういう勝負ごとになると竜胆さんは熱くなるタイプなんだね。
「にやにやするなよな…」
「へへっ、ごめんごめん」
竜胆さんがちゃんと女の子していて思わずほっこりしてしまう。
…
で。ピッチングの結果?
そんなの言わずとも僕の惨敗だったよ。
というか僕は一枚もパネルを射貫く事が出来なかった。普通そんなことある?
ぼくには決定的なまでにコントロール力が欠如していた。
一方竜胆さんは決められた球数内でキッチリ全ての的を射貫いていた。
これで竜胆さんが一本先取。僕は先を行かれた形となる。
「じゃーんけーん、ぽんっ」
じゃんけんの二回戦目は僕が勝った。
ということで選択した競技はパターゴルフ。
選択理由は僕にもできそう且つ昔から細々とした作業が嫌いじゃないから。
反対に竜胆さんはこういう作業系は苦手そうだと僕の先入観が告げていた。
…
「うがぁー、くそ入んねーっ、あーいらいらする~」
「よしっ」
僕の予想通りだった。
竜胆さんはボールを強く打ちすぎたり思い通りの方向には全然転がっていかなかったりして結果は僕の圧勝だった。
これで一本取り返した形になる。
竜胆さんは持ち前の負けず嫌いを発揮して僕からどうにか逆転するチャンスを最後まで狙って試行錯誤していたみたいだけど上手くいかなかったみたい。
普段頼りになる竜胆さんがあーだこーだ言いながらがむしゃらに頑張る姿を見るのは少し面白かった。
「うーん、次どうしようかな…」
「宮沢はじゃんけん強いな」
「そう?普通じゃないかな…。うーん。そうだな、じゃあ次はアーチェリーで」
「おっけ」
球技系では絶対竜胆さんには勝てないので極力動く必要がない且つ昔テレビゲームなどでやったこともあるし十分勝つチャンスあるでしょという判断基準で選択した。
…
「えっ、あたんない!?」
「ははっ、宮沢下手だなー」
結果は惨敗だった。
僕は竜胆さんに笑われて当然の下手っぷりを披露した。
まず弓を引く際に腕のプルプルが止まらなくて狙いが定まらなかった。さらには空間把握能力に乏しいようで奥行きを読む力がなく的から離れた場所にしか着矢しなかった。悲しい。
弓矢道はどうやら僕が思っていたよりもずっと難しく果てしなく険しい道のりらしかった。
竜胆さんも最初の頃はミスショットを連発していたが中盤からはコツを掴んだのか的を射貫く回数が激増した。
その飲み込みの早さが羨ましい。やっぱり運動神経とかに関係するのかなぁ…
とにもかくにも竜胆さんが先に二本取り僕はリーチをかけられた形となった。
…
「はぁー負けた」
「勝っちゃった」
しかし一転、じゃんけんに勝った竜胆さんが選択した競技であるサーキットで事件は起こった。
晴天の下、僕と竜胆さんが最終コーナーに差し掛かりデッドヒートを繰り出している時なんとマシーンの故障が発生し竜胆さんの乗る機体が動かなくなってしまったのだ。
幸い竜胆さんに怪我はなかった。
ただぬるっと僕が勝っちゃってあんまりスッキリしない幕引きになってしまった。
不慮の事故だったのでやり直しも提案したのだがこれも結果は結果だと僕の運の強さを讃えてくれて、竜胆さんはこの結果を甘んじて受け入れている様子だった。
そんな風にちょっとトラブルはあったけど、無事僕の方も二本取り竜胆さんと同様に勝利への王手を掛けた。
「これで最後だな」
「うん」
「宮沢には悪いが勝たせてもらう」
「ふふ、勝つのは僕の方だよっ」
イイ感じにお互いが熱くなってる中じゃんけんぽん!
結果は竜胆さんが勝った。
そして選択競技は卓球だった。
球技…まっすぐ勝ちに来ていると思った。
だがしかし…
「うそ、だろ…」
「やったー!」
結果は僕のストレート勝ちだった。
ふっふっふ、油断していたね?
竜胆さんは信じられないとばかりにしきりに僕の顔を見てきた。
大丈夫、何もズルや小細工はしてないよ。ただ純粋に技術で竜胆さんを上回っただけ。
昔から球技系が苦手な僕だけど卓球だけは得意だった。
実は朱里ちゃんとよく泊まるホテルなどに結構な確率で台が置いてあることが多いのだ。
目が冴え眠れない僕は朱里ちゃんが寝静まった後こそこそ目を盗み、よく他の宿泊者さんを誘って打ち合ってきた経験がある。
純粋に竜胆さんより卓球に触れる時間が多かった。
人と戦っていく中で伸びた技術もあれば一期一会の出会いの中偶然卓球の顧問だという人に出会って軽く手ほどきを受けたり…
最近は回数は減っていたがあのコソ錬していた日々が懐かしい。久しぶりだけど腕が鈍っていなくてよかった。
とにかくこれで僕は五本中三本取ったわけだから僕の勝利だった。
「ぐふふふ、なに頼もうかな~」
「こえぇよ」
わざと悪い顔をして笑みを浮かべると竜胆さんは若干引いてた。それにまだどこか自身が負けたことへの驚きというか信じられないといった様子が残っていた。
(うーん…)
なんとなくそんな竜胆さんが可哀想に思えてきてしまったので罰ゲームはまた今度と保留にしておくことにした。
貞操逆転世界で”DV彼女”に疲れて自殺しそうになっていたら、校内で有名な孤高の金髪イケメン美少女さんに救われたので浮気して幸せになろうと思います! 遅桜ノンネ @osozakura_nonne18
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