第5話 宇宙人と地球人

 西島勝人と臼杵知花は、目と目が合った。勝人は、前回あった時から気になる存在だった。今までで、初めての感情が芽生えた。臼井知花も淡い恋の予感がした。今までの会話が聞かれていたのかと、はにかみながら不思議な感情が沸き起こっていた。


 勝人は、秀俊に何だろうと聞いた。

「恋かもね」


 秀俊の方が先に恋について感情が芽生えていた。ほかの従業員からも恋について聞かれていたからだ。地下施設でも男子と女子はいた。でも、兄弟姉妹のように育ったので、愛情はあっても、恋という感情ではなかった。

 それで、熱い胸の内は母星の大人から聞くしかなかった。母星でも、宇宙船の乗組員の間で長く過ごすと、男女間で問題を起こす事例があったので、時が来たということで問題視された。母星からは早速、愛と恋についての講義があり、宇宙人たちは、自然な感情だと初めて知った。



 臼杵知花の組織は、世界中に散らばり過ごしていた。ただ日本はかなり厳しい環境かもしれない。南国の組織に人類存続を託すしかないかもしれないが、やれるだけはやっていく覚悟だった。



 この1万年の間氷期の中で築いた人類の文明なのですが、文明を築いた人類は46億年で初めてです。そして、この間氷期が人類に託された宇宙実験だったのです。しかし、人類は戦争しか出来ませんでした。戦争を回避できる知恵を持てなかったのです。戦争のために知識を使い捨てにしたのです。その戦争を経済のためと言い換え、宗教も戦争の隠れ蓑にして戦う理由にしてきたのです。

 それが、一人なら罰せられ、集団なら罰せられないといった、全ての世界で矛盾を引き起こしているのです。


 宇宙の中の地球は、歴史からみて地球の気候が宇宙からの影響が避けられないことを、学者は知っていたはずです。それが、氷河時代です。しかし、それは他人事でした。自分が生きている間に起きる事がないと思い込んでいたのです。いや、起きてほしくないと思っていたのか、知る機会を拒絶してきたのです。知っていた人でさえ深刻に捉えていなかったのです。それはいつもの事です。

 想定外といった言葉や正常性バイアス・同調性バイアス・楽観主義バイアスなどといった思考や行動の偏りを生じさせ、全てをやり過ごしてきたからです。


 氷河時代は、数億年から数千万年続いてきました。現在は、まだ258万年しか経過していません。46億年のうち40億年は生物が住めない地球でした。そのうちの間氷期1万年が、文明を持てた人類の腕の見せ所だったのです。未来は、1万年の間氷期を10万年の氷期で全てを壊滅させてしまうのでしょうか。


 変化を見逃したら、モーフィングのように全く違う世界が待っているのです。


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