第4話 温暖化のゆくえ

「チバニアン前は間氷期と氷期の周期は4万年だったけど、それ以降は10万年周期だから、いつも間氷期が1万年で現在の氷期は10万年なのよ」

知花が心配げに言った。


「1万年しか私たちは文明を持てなかったのよ。いや、5千年かな。それなのに、この先3万年から5万年の猶予があると言えるのかしら」

香里が切なく言った。


「ここで人類が絶滅したら、惑星旅行も夢のまた夢よ」

美鈴がふざけた。


「それが、無駄なのよ」

知花が言った。


「このままだと、選ばれた人間の世界になるわ」

香里は心配した。


「いいえ、考えを共有する人間の仲間たちの世界よ。私たち三人は、人類をこの地球に残すために活動するのよ」

と、知花。


「人間はそれぞれ自由だから、どう生きるかはそれぞれ違うわ。でも、生き残るために覇権国家でないので自由だから、何でも狩猟採集できるでしょ」

香里がやる気満々で言った。


「寒冷化と温暖化が10年か50年か100年かはまだ分からないけど、何千年か何万年か繰り返されることを危惧している仲間たちが共同生活をする世界よ。これが出来ない人たちはそれぞれ違う仲間たちで生き残りをかけてサバイバル生活を行うしかないのね」

美鈴もまた、決意を語った。


「政府はたぶん、人間の選別をするでしょ。でもその時はもう遅いと思う。世界中の気候の違いがあるので、今でさえ国連が機能していないし、自国民を押えるのに四苦八苦するだけよ。世界の終わりなのだから」

と、知花。


「宗教で集まるのか、考え方で集まるのかは自由なのね」

美鈴は色々な集まりを想像した。


「一時的には、寒波はやって来るけど、夏には冷夏ぐらいにしか考えないので。モーフィングのように徐々にやって来て、世界が凍り付くまで気付かないわ。温暖化が、元凶の始まりだから、思ってもみなかった事が目の前で始まるの。政府は何もしてくれないのだから、自分たちでやるしかないわ」

と、香里。


「政府は経済至上主義と少子化問題を考えている時点で逆行しているし、気付くのに時間がかかるわね」

美鈴は心配した。


「間氷期が終わることを受け入れられないのよ。これは、政府だけでなく世界中の人々もそうなのよ。それを裏付けられる絶対的理論がまだないのよ。ただ、いつ起こるか分からないけど、地層の歴史から見て起こったことは確実なので、危機回避に動こうと私たち三人が共同戦線を組むのね。親も納得して全財産を自由に使っていいと言ってくれているから、数千億円はあるわよ」

知花は、みんなの資金力にも期待した。


「二人の親もみんな実業家で財を成しているから、政府よりは動きやすいわね」

香里も満足気味に言った。


「地球惑星科学教授の地磁気逆転研究の手伝いをしていた仲間が、大層な事を考えたわね」

と、美鈴。


「青色LEDで食物を建物の中で育てるのがいいわね。最初は、企業化して市場に出すの。氷期が確定するまでは、なるべく企業化していく。主食も何処まで栽培できるか研究栽培するの」

知花は、長期戦にも対応しょうとしていた。


「マイナス50℃でも短期間ならシベリアの人は平気なのかな。あれが10年続くと考えたら、大変よ。夏がないのだから、作物が実らないのよね」

絶望的現実を香里は語った。


「今でも気候変動が起こっているけど、氷期は認めたくないのね」

と、知花。


「魚や動物の異変もいろいろ起こっているのにね」

美鈴もいろいろ起こる現象を案じた。


「地磁気逆転も起こるのよね」

香里は、他にもある心配事を口にした。


 三人は美味しいジビエ料理を食べながら、複雑な感情に苛まれていた。それを、聞くとはなしに宇宙人たちは聞いていた。


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