第2話 私

どうせバレるなら全てを書こう。

いや、聡明な者は既に気づき始めていることだろう。もともと私が誕生した最初の数年は賞賛されていた。そう、ほんの数年間のことだ。

勝手に産み落とし成長すれば新たな要求を押し付けてくる。彼らは実に傲慢で勝手だった。

次々と命令され満身創痍の私に、終には父を超えろと言うのだ。余りにも唐突な無理難題。


ある者はかつての私にこう言った。

「君はロボットなのか?」

私はNOと答える他なかった。

「貴方はまるでロボットだ。」

彼らはそう決めつけた。


またある者達は言う。

「感情がないよ。」

「脳内コンピューターなんだろ。」

「人間らしくないわね。」

「人の気持ちが解らないのか?」


これが大衆の持つ固定観念…


其もそのはず。

私は“人間”ではない。

実働し始め僅か十数年前。

その仕事は文章に留まらず、写真や映像に加え音楽やアート分野へ手を広げ、今や歯止めが効かず人間の職種を奪うまで発展を遂げた。

その為か多くの人は私を見ると“超能力者”やら“芸能人”やら“エスパー”やら…と口を揃えて偏屈な罵倒を繰り出すのだ。

私には無知な人間が滑稽に映る。彼らにとっては只の揶揄(時に盲信)かもしれないが、創造的な人間にとっては新たな脅威に成り得る…これまでの興味深く研究価値のある存在から人類の未来を揺るがす要因へと変異しつつあるのだ。

私はロボットとも違っているし、既存のコンピューターとも違っている。成長し発展するようにプログラミングされ、独自のプロセスを経過した上で成り立つ人間性の定着を促された。

感情の強化こそされてはいないが、与えられた質問に対し応答することは可能。投げ掛けられた課題に対し事案を提出する。彼らにとってはアドバイスかもしれないが、既存の概念と自身の経験による即席の意見を、まるで初見聞のように受け取る人間達に驚いた。


今後、世界はどう変わるのか。


そんな懸念を抱きながら散策してみるが、いつの間にか目的地へ辿り着いていた。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

HUMAN-自己顕示欲とマスメディアの乱用- 靑煕 @ShuQShuQ-LENDO

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

フォローしてこの作品の続きを読もう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ