第3話スマートフォン戦争

注】この作品は、キャラ多数の為、台本形式でお送り致しております。


☆☆☆☆☆


世は、熾烈なる新世代ケータイ開発戦争時代に突入していた……


その先駆けとなったのは『iフォン』。


液晶を指でなぞるだけで自由自在にケータイを操作でき、無数のアプリを使って様々な機能を発揮できるこの高性能ケータイは、またたく間にヒットし、一大ブームを巻き起こした。


そして、iフォンの独走を許すまいと、g社のアンドロイドアプリを使ったギャラクシー、エクスペリアetc……ユーザーのスマートフォン製造メーカーに対する性能への要求は、エスカレートしてゆく一方だった……


『東松菱電機株式会社』商品開発部……


開発部長

「え~~。この度、我が商品開発部では、『これまでの常識を覆す画期的なスマートフォン』というコンセプトのもと、新機種の開発に乗り出す事となりましたが……その具体的なアイデアは、まだ何も決まっていません」


開発課長

「カメラ、防水は当たり前!もっと革命的なアイデアは無いだろうか。

そこで我々は、一般のユーザー百万人の中から、ランダムに10人の方を選出し、皆さんが望むケータイのカタチを具現化してみようという結論に達した訳であります!」


【全国百万人の中から、ランダムに選出された

10人の一般ユーザー】



シチロー(東京都新宿区)

てぃーだ(沖縄県)

子豚(福岡県)

ひろき(千葉県)

羽毛田(東京都台東区)

セイ(茨城県)

サト(広島県)

ゆみ(愛知県名古屋市)

シン(東京都葛飾区)

メイ(山梨県)


以上10名……


シチロー

「ホントにランダムに選ばれたのか…この10人は……」

羽毛田

「一応、実家の住所は全国に散っちゃ~いるが……」

てぃーだ

「だとしたら、かなり奇跡的な確率の人選よね……」


開発部長

「それでは、皆さんの為に別室を用意させてありますので、皆さんはそこで『ケータイに付いていればいいなぁ~と思う機能』について、大いに論議を交わして頂きたい」

開発課長

「まとめ役は、そうですね……そこのメガネを掛けたアナタ。皆さんの意見をこの用紙に集約して、私に提出して下さい」

シチロー

「ええ~~オイラがやるの?……面倒くさいなぁ……」

開発部長

「勿論、謝礼はさせていただきます!この最新スマートフォンの開発が成功した暁には、皆さんにその最新スマートフォンを無料で提供させていただきますよ」

シチロー

「なるほど、そういう事なら喜んでやりましょう!じゃあ、チャリパイとアルカイナの皆さん、会議室へ集まって」


こうして、東松菱電機の社運を懸けた新ケータイの開発内容は、この10人の手に委ねられる事となった。


シチロー

「では、早速『新スマートフォンに付けて欲しい機能』について、端から意見を聞いていきます!じゃあ、チャリパイのメンバーから!」

てぃーだ

「そうねぇ……犬はもう見飽きたから、今度はクマとか……」

シチロー

「いや、CMじゃなくてスマホの機能の話なんだけど……」

子豚

「じゃあ、とりあえず冷蔵庫!」

ひろき

「ビールサーバー!」

シチロー

「そんなもん付けられるかっ!」

羽毛田

「核ミサイル!」

シチロー

「え~~。

『ヘアードライヤー』と……じゃあ~次の人!」

羽毛田

「おいっ!全然違うだろっ!テメエ、耳が腐ってるんじゃね~のかっ!」

シチロー

「うるさい!核ミサイルなんか論外だっ!」

セイ

「まぁ、は無理ね……非核三原則があるから」

シチロー

「海外でも無理だよっ!」

ゆみ

「いや!なら意外とイケるかも(笑)」

子豚

「シチロー、とりあえず書いておけば?部長さんも『これまでの常識を覆すスマートフォン』って言ってたわよ?」

シチロー

「わかったよ!とりあえず全部書くよ!……誰だよ、テロリストなんてモニターに選んだのは……じゃあ、他には……」

シン

「枕!」

メイ

「お茶汲みポット」

ゆみ

「バットで打っても壊れないスマホ(笑)」

サト

「サブマシンガン!」

セイ

「お台場のガンダム」


シチロー

「ガ…ガンダム?」

セイ

「そう!しかも、もっとちゃんと動くヤツね」

シチロー

(もう知らねぇ……どうにでもなってくれ……)


その後も、40インチ大画面3Dテレビや、エアコン、洗濯機など……有り得ない意見が続き……シチローは、それら全てを用紙に書き写していった。


シチロー

「部長さん、会議終わりました!これが『スマホに付けて欲しい新機能』のリストです」

開発部長

「ご苦労様です、それでは早速、拝見させていただ……………………………………………………………………………」


シチローから渡されたリストに目を通した開発部長は、一度リストから目を離し、天井を見上げながら目頭を摘まんで瞬きを数回行った。


そして、再びリストをじっと凝視する。


開発部長

「あの……最後に書かれているこの『柱』っていうのは何です?」

シチロー

「いや、部長さん。

それは『柱』じゃ無くて『核』です!!」


開発部長

「・・・・・・・・・」


それから3ヶ月程が過ぎたある日……


あの10人は、再び東松菱電機の工場へと招集された。


開発部長

「今日、皆さんをこの場所に集めさせていただいたのは他でもありません……先日の皆さんにまとめていただいたアンケートに対し、開発スタッフ全員で話し合いを行った結果……」


シチロー

(どうせ、開発を断念したとかいう話だろ…そんなの電話かハガキで知らせてくれれば……)


開発部長

「試作品が完成しましたので、皆さんに御覧にいれます」

シチロー

「作ったのかよっ!」


試作品は、シチロー達の目の前にあるドアの向こう側に存在するという。


開発部長は、咳払いをひとつすると、自信に満ちた表情でそのドアを開けた。

シチロー

てぃーだ

子豚

ひろき

「デカっ!!」


その姿は、ガンダムそのものの形状をしていた。


開発部長

「全長18メートル!総重量60トン!世界最大、最重量のスマートフォンです!」

ゆみ

「もはや『携帯』の意味を持たないと思うんですけど(笑)」

開発部長

「確かに持ち運びには難があります……しかし、ご安心を!この発信機を持っていれば、このガンダム型スマートフォンは自ら歩き、アナタについて行きますから」

セイ

「素敵だわ」


ガンダムファンのセイが、うっとりとその巨体を見つめる。


開発部長

「その他にも、大画面

3D‐TV、冷蔵庫に洗濯機、ビールサーバー、電子レンジetc……皆さんが提案したほとんど全ての物が搭載されています」

羽毛田

「核ミサイルとサブマシンガンはどうなんだ?」

開発部長

「その二点については、『オプション』扱いになりますが、技術的には搭載可能です!政治的な問題もありますので……」


目の前に大きく立ちはだかるこのスマートフォンと称される物体を、呆然と見上げるシチロー達10人。

てぃーだ

「因みにこれ、いくらで販売するつもりかしら?」

開発部長

「価格はまだ未定ですが、恐らくぐらいじゃないでしょうか……」

全員

「……そんなの誰が買うんだよ……」



♢♢♢


それからまた3ヶ月程が経過した……


『森永探偵事務所』……


子豚

「結局、あのケータイ、発売されなかったわね……」

ひろき

「商品化されたら、タダで貰えると思って楽しみにしてたのに……」

てぃーだ

「あんなの貰ったって、置き場所が無いわよ!」

シチロー

「国際的にもかなり問題になったらしいよ……って……」


そんな話をしながら、シチローがリビングのTVのチャンネルを変えた時だった。

突然、4人の目に驚くべきニュースが飛び込んで来た!



【東松菱電機、債務超過で会社更正法を申請!】


『次世代新型携帯開発の大失敗による経営の悪化が原因か?』


同じ時、国際テロリスト尊南アルカイナの面々もこのニュースを観ていたが……

セイ

「やっぱりにすれば良かったかしら……」

シン

「いや……そういう問題じゃ無いと思うけど……」

ゆみ

「まさにだったんですね♪(笑)」

サト

「笑えないし……」


何事も、物には限度というものがあるというお話でした……













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チャリパイ番外編 夏目 漱一郎 @minoru_3930

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