お題2 「心霊スーツ」 2

  今日は同期との食事会だ。

 みんな油がのった社内の精鋭ばかり。

 沢山の成果、沢山のトラブルを乗り越え生き残った。正真正銘の企業戦士たちだ。

 そして、油断ならないライバルたちでもある。

 そんな我々が集まり、話をすれば自然と会話の内容はあのことになる。

 我々が人生を捧げる大企業にはあるものが代々継承されている。

 それは。

 社外秘の中でも秘中之秘。についてである。

 部外者は知らない。社内でも知るのものは役員と役員候補の連中だけだ。

 

 そのスーツを着ると、なんと、気配を消せる。だが、役員にだけはその仕事はぶりが見え順調に役員の道を進むという。足の引っ張り合いに巻き込まれることもなく、ただただ昇進だけに情熱を燃やせる代物だ。

 そのスーツに袖を通すものは同期からは全くみえなくなるという。記憶からも消えるという話もあるが実際のところ何が本当の話なのかはその時になってみなとわからない。

 そして、役員の椅子に座ると別のものに渡される。

 みなが自分こそがそのスーツに相応しいと信じて疑わない。中には表面上はそんなスーツの力を借りなくても俺は役員の席に座ると豪語するものもいるが、見え透いた嘘だと皆が知っている。


 お店の女性が個室に入ってきた。

 こちら、当店おすすめの日本酒です。

 そういって見とれるほど旨そうなが目の前で出来上がった。

 数は6つ。

 俺たちには5人。

 心霊スーツがそばにいる。すでに。

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