家定と篤姫とカステラ

額田兼続

 

あつ

家定いえさだが言った。

「家定様?どうしたのですか?」

篤姫がそう聞くと、

「今日はこんな洋菓子を作ってみた」

と言った。手には洋菓子の乗ったお盆が。

「なんと言うのですか?」

「これはかすていらと言うものなんだって。甘いから、一個食べてみて」

「はい、では頂きます…」

柔らかくて、甘い。凄く美味しい。

「美味しい…!」

「でしょ?気に入ったなら、もっとあるけど、食べる?」

「じゃあ、そうします」


数年後。篤姫改め天璋院てんしょういんは、空を見上げながら考え事をしていた。

(家定様…あの時、数年前。かすていら…カステラを作ってくれて、一緒に食べたでしょ?あれ、凄く美味しかったけど、一番最初に食べたカステラが一番美味しかったわ)

そして、ふふっと微笑んだ後、こう呟いた。

「私がそっちに行ったら、また作ってね、カステラ」

義母上ははうえ?何してるんですか?」

和宮かずのみやが聞く。

「少し、家定様と話していただけよ」

「どんな事を話していたんですか?」

「カステラの話」

「義母上、私も食べてみたいです」

「わかったわ。それじゃあ家茂様も誘って三人で食べましょう」

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家定と篤姫とカステラ 額田兼続 @Nekofuwa-jarashi

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