俺の部屋

 魔王城の外に出て数分。


「お待たせ致しました。お部屋の準備が出来ましたので、どうぞこちらへ」


 そうして待っていると、額に角を生やしてメイド服を着た俺と同じ黒い髪の女性がそう言ってやってきた。

 おぉ、黒髪か。明らかに角があって魔族だけど、黒髪なんて珍しいし、少し親近感が湧くな。


「あぁ」


 魔族とはいえ初対面なんだし、敬語を使った方がいいのか? とか思ったけど、俺は四天王の全員をボコボコにした男なんだし、魔王以外に敬語を使うのはおかしいだろうと思って、普通に頷いた。

 すると、メイドの女性は俺の態度に全く気を害した様子はなく、一度頭を下げてから俺を部屋に案内してくれた。


「こちらがあなたのお部屋になります」


 そうして着いて行っていると、、一つの部屋の前に止まったメイドの女性がそう言ってきた。

 扉は別に普通だ。

 まぁ、豪華な部屋を望んでる訳でもないし、全く問題ないな。

 

「入ってもいいのか?」


 中が気になった俺は一応そう聞いた。

 俺の部屋だって言ってくれてるんだし、こんなこと聞かなくても入っていいってことくらい分かってるんだけど、一応、な。


 と言うか、中が割と気になる。

 豪華じゃなくてもいいとは言ったが、ここは人間の世界じゃなくて魔族の世界なんだ。

 もしかしたら、石のベッドとかがあるかもしれないしな。

 その場合は、絶対に人間が使えるような普通のベッドを持ってきてもらおう。


「はい、もちろん構いませんよ」


 そう思っていると、メイドの女性がそう言ってくれたから、俺は部屋の中に入った。

 すると、中には俺の体には大きすぎるくらいのベッドと何らかの魔道具が何個か置いてあった。

 取り敢えず、大きすぎるのは置いておくとして、ベッドは普通だったな。

 なんなら、かなり豪華な方だ。


「どうですか? お気に召しましたか?」


「あぁ、もちろんだよ。是非魔王様にお礼を言っておいてくれ」


「かしこまりました」


 この魔道具の効果も聞いておくべきか? まぁ、聞いておくべきか。

 何か便利な魔道具だった場合、後で知ったら絶対後悔するしな。


「この魔道具はどんな効果があるんだ?」


「私が把握しているのは、それが内側からの音を遮断する魔道具で、そちらが登録者様の魔力に反応し音を鳴らす魔道具ですね。何か用があるとき、それで呼び出したりするんですよ」


 まぁ、要は連絡用の魔道具ってことか。


「登録者っていうのは複数人いるのか? その場合、誰が呼んでるのか、とかは判断できないのか?」


「登録者様は魔王様に四天王の皆様です。そして、もちろん誰からの呼び出しというのは音によって把握できます」


「人によって音が変わるってことか?」


「はい、そうなります。また後ほど、音については私か貴方様の監視役のお方に聞いてくだされば、説明させていただきます」


「それ、今じゃダメなのか?」


「申し訳ありませんが、私は魔王様にお部屋を気に入っていただけたことを報告に行かなければなりません」


「そうか。その間、俺は適当に過ごしてたらいいのか?」


「はい。部屋でくつろぐなり、外に出るなり、自由にしてもらって構いません。ただ、外に行く場合は、まだ貴方様の強さが信じられておらず、問題が発生するかもしれませんが」


 ……問題? ……あれか、喧嘩を吹っ掛けられるってことでいいのか? 魔族の世界だし、そうなんだろうな。


「その場合、反撃はしても大丈夫なのか?」


「はい。もちろんでございます。魔族の世界は強い方が正義ですから」


「そうか。そりゃ単純でいいね」


「はい」


 もう俺からの要件がないと思ったのか、メイドの女性は一礼をしてから部屋を出ていった。

 ……あれだな。名前くらい、聞いておけばよかったな。

 まぁ、また後で会えるか。

 さっき魔道具から出る音については私か俺の監視役の人に聞いてくれって言ってたしな。

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