チャンピオン

「そうか、この男で間違いないか。」


「ああ、こいつが俺を殴った男だ。」


ホームレスの男は、手等而に一枚の写真を見せ、自分が暴行を受けたのはこの男だと


提示した。


捜査本部はすぐさま写真の男、神田かみだ 英伍えいご29歳の足取りを追


った。


神田は元プロボクサー。バンタム級西日本チャンピオンで、喧嘩ボクシングでならし


た男だ。


タイトル戦で覚せい剤の使用が発覚し、チャンピオンの座を追われてからはボクシン


グの世界から遠のき、水商売の用心棒として生活していた。






1999年3月6日


「神田さーん、神田英伍さん、警察です。少しお話を伺いたいのですが…」


銀神町の神田のアパートに来ていた剪芽梨班のうらかた真児しんじ


102と書かれたドアを叩きながら中の様子を窺った。


「手等而。」


卦は、隣で部屋の様子を窺う手等而に目配せで合図した。


と同時にドアを強引に蹴破った。


だが、神田の姿はそこには無かった。






1999年3月9日


「大阪府警から各捜査車両。銀神橋で男の変死体。R事件と関連性あり。遺体は神田と判明。至急向かわれたし。」


本部から無線連絡が入った。


神田英伍が殺害された。


死因は撲殺。


ボクサーである神田が、撲殺されたことに捜査員は驚いた。


「おいおい、仮にも西日本のチャンピオンだぞ。星は世界チャンピオンか?」


剪芽梨班、特攻隊長の卦は犯人がただものではないとおもんばかった。


「いずれにしてもこれで振り出しです。本星は神田じゃなかったという事。ボクサーを撲殺できる凄腕の暗殺者だという事です。早く見つけないとまだ被害者が出る気がします。卦さん、急ぎましょう。」


助手席に座る手等而は、運転手の卦を促した。


セドリックの覆面パトは、銀神橋に向かってサイレンを鳴らし、スピードを上げた。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

『剪芽梨刑事シリーズ③千里眼・・・ストーカー』 138億年から来た人間 @onmyoudou

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

フォローしてこの作品の続きを読もう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ