想い馳せる世界の輝き

後藤 悠慈

紅い彗星群

 それはある時期の深夜に発生する絶景だ。話しによると、揺らめく紅い星々が空を走っているように見えるらしい。その数は多いと空を埋め尽くし、一時的に深夜が朝を迎えたようだと表現する絶景旅人たちが多い。私は箒にまたがり、観測された場所へと向かった。


 観測場所から一番近い村に宿を取り、夜になるまで時間を潰すことにした。私は村に近い湖へと散歩をして、自然の空気を吸う。座れる場所を見つけ、そこに座ってしばらく、私の隣にある鳥がいることに気づいた。その鳥は天性属性が炎属性の渡り鳥。私はその鳥に手を伸ばす。その鳥は抵抗せず、頭をひと撫でさせてくれた。そしてその鳥は飛び立つ。私はその鳥を見送り、村へと戻って準備を始め、そして日が落ちた時間から観測された場所へと向かった。


 空は快晴。満点の星々は私たちを照らす。私は背の高い木の太めの枝を見つけ、そこに腰掛ける。すると、隣にまたあの渡り鳥が来たことに気づいた。その鳥は、直感でさきほど会った鳥だと理解した。私は再びその鳥を撫でる。気持ちよさそうに目を細める鳥は、何か意を決したように羽を広げ、力強く飛んだ。その鳥は空中で炎属性魔法を発動し、体全体は燃え盛る。そのまま空へとどんどん登っていく。その時、夜空に紅い彗星群が現れた。真っ暗の空に点々と輝く散りばめられた宝石の輝きを背景に、その紅い彗星群は最初は細く、徐々に太くなっていく。その紅い彗星群に先ほどの鳥は合流しようとするかのように上昇していった。

 そう、その紅い彗星群は、その炎属性の渡り鳥が深夜に渡っている現象だったのだ。さきほどの鳥は恐らく一時的に逸れた個体だったのだろう。それも今はちゃんと群れに合流し、次の約束の地へと渡っていく。


 私はその命の輝きを見ながら、深く息を吸い、吐き出して、ただただ、その美しい紅い彗星群の行方を見送ったのだった。


 

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想い馳せる世界の輝き 後藤 悠慈 @yuji4633

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