こちら火星人、全地球人どもに告ぐ!

最上

第1話 両親の死

 咲希サキは重たい雨に押しつぶされそうになりながら黒い傘をさしていた。目の前には事故で形が崩れた車が、崖に落ちそうそうになっている。もう夜も遅いので、辺りは暗闇であり、1メートル先ですら真っ暗である。そんな中で、数人の警察官が小さなライト片手に必死に事故の捜査をしていた。


星野咲希ホシノサキさんですか?」

と、目の前にいた警察が咲希に問いかけた。

「はい、そうです。」

咲希は淡々と答えた。

「ご両親の容態は?」

そう警察が言いにくそうに咲希に言った。

咲希は言葉に何も感情を入れずに、

「部活が終わったあとすぐに駆けつけましたが、その時にはもう……。お医者様によると病院についたときにはもう手遅れだったそうです。」

「そうですか……失礼しました。」

警察は軽く頭を下げて言った。雨はより激しく降り始めた。咲希はただ壊れた車を眺めていた。

暗闇の奥から年老いた警官が咲希の方へやってきて、

「咲希さん。車のトランクにこんなものが入っていました。」

と、言って、アラビア語か、ハングルのような文字で書かれた文章がズラッと並べられた数枚の紙を咲希に手渡した。

「何か心当たりはありませんか?」

「いえ、全く。」

「そうですか…。私の長年の勘で、この紙がこの時期の原因をはっきり示してくれると確信しているのですが、今の段階ではこの紙はただの落書きなのです。なので、一旦持って帰ってもらって、この紙を解読していただけないでしょうか?」

と、年老いた警官は咲希に嘆願した。

「わかりました。責任もって探します。」

「ありがとうございます。」

そう言って年老いた警官は深々と頭を下げた。


咲希は自転車に乗って山を下った。激しかった雨も、もうすっかり止んで、空には点々と光る星が見えた。山を下り終えて街に出ると、店やマンションの光がイルミネーションのように光っていた。道路にはほとんど車も人の姿も見えない。


咲希が裏道に入ると、さっきまでの光は無くなり、まさに深夜を感じさせる暗さと静けさが広がっていた。道路の奥に家が見えてきた頃、突然咲希の体が中に浮いた。

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