第149話 寄り道
出発までに色々とあったけど、何とか無事にビオダスダールを出発。
クリンガルクまでは遠いということもあり、予定通り馬車での移動となっている。
「おチビ達がうるさかったけど、何とか出発できたね! グレアムが変なことを言ったから、あの後もずっと模擬戦を要求してくるから大変だったよ!」
「口を滑らせたアオイが悪い。でも、三人とも楽しそうに剣を振っていたな。アオイにもこてんぱんにやられたから、やる気なくなってしまわないかが唯一心配だった」
「三人共、そんなに弱くないから大丈夫ですよ。アオイちゃんに負けた後から、より私に剣を教えてほしいと言ってくるようになりましたし」
「えっ? あの三人、ジーニアには模擬戦を挑んでこないの?」
「ええ。どうやらアオイちゃんだけが敵として認識されているみたいで、私はアオイちゃんを倒すのを手伝ってくれる味方みたいな立ち位置になっている気がします」
「なんじゃそれ! 私だけが悪役みたいじゃん!」
アオイは変な顔をしながら嘆いているが、今回だけでなく普段の立ち振る舞いも関係しているだろうから自業自得。
完全に精神年齢が三人と同じで、事あるごとに軽い言い争いとかもしているし、三人にとっての良い目標にされたのだろう。
まぁ色々言ったけど、アオイが全く同じ目線で三人と接してくれているのは助かっている。
「面倒くさがらずに相手してやってくれ。アオイにとっても良い練習になるだろうしな」
「まぁおチビ達と遊ぶのは楽しいからいいけどね! どうせなら私が三人をこてんぱんにしまくって強くしてあげちゃおっかな!」
「私はそんなアオイちゃんに勝てるように、三人への指導をしていきますね」
諦めさせるための模擬戦だったけど、予想以上に良い方向に転がっている気がする。
後はトリシアとモードももう少し輪に入ってくれると嬉しいのだが、二人は子供という年齢ではないことから、俺達を主人として見てしまっているから難しい気がしている。
何か良いアイデアがないか、頭を悩ませながら馬車に揺られ続けていると――あっという間に中継地点の街に着いてしまった。
揺られていた時間的には半日ほどと、結構短い距離だった気がする。
「もう着いたんだ! ……おぉ、意外に大きな街!」
「もう少し先にも街自体はあるみたいなんだが、ギルド長がこの街には寄った方がいいって言われたから、この街を一つ目の中継地点にした」
「ギルド長さんお墨付きの街なんですね。何か有名なものでもあるのでしょうか?」
「ギルド長曰く、最高に美味しいデザートを食べられる店があるらしい」
「デザートかぁ……。お腹空いていたから、美味しい料理店の方が良かったなぁ!」
「私は嬉しいです! 覚えているか分かりませんが、私がビオダスダールに来た最初の目的はパティシエになることでしたから! デザートやスイーツは大好きなんです!」
もちろん覚えていたし、ジーニアに食べさせたかったというのが大きな理由。
予想以上に喜んでくれているし、ここを一つ目の中継地点にして良かったな。
「もちろん覚えていたし、せっかくならジーニアに食べてもらいたくて寄ったからな。必ず行こう」
「ありがとうございます! 本当に楽しみです!」
「夜ご飯はお肉を食べさせてよ!」
うっきうきのジーニアに対し、テンションが低めのアオイ。
確かにお腹が空いているし俺もアオイよりの気持ちであるが、こんなに嬉しそうなジーニアを見て、デザートは後でにしようとは言えない。
空腹を我慢しつつ、ギルド長から教わった場所に行ってみると……一目でその店だと分かる行列があった。
基本的にスイーツやデザート系のお店は女性が多いのだが、この店は男性も多く並んでいて、それだけで男の俺としては期待値が上がる。
「あそこのお店ですかね? えーっと、『ブールソレイユ』ですかね?」
「その名前だ。あそこで間違いない」
「凄い並んでる! 本当に有名店なんだ!」
俺達は列の最後方に並び、店内を覗き見ながら順番が来るのを待つ。
店内を見た限りでは、何やらケーキのようにも見えるが、どんな食べ物なのかまでは分からない。
期待感を持ったまま店内に入ると、生地の焼けた甘い香りとチョコの美味しそうな匂いが鼻孔を擽る。
席に着き、とりあえず人気のメニューと気になったものをいくつか注文。
待っていると、すぐに紅茶と一緒に頼んだデザートが運ばれてきた。
お皿には四種類のケーキのようなものが乗っている。
生のフルーツをふんだんに使ったクリームのケーキ、焼き目のついた少し硬そうなパンケーキ、チョコのコーティングがされたチョコ生クリームのロールケーキ、真っ白なふわっふわのスポンジケーキの計四種類。
パンケーキ以外は美味しそうに見えるし、多分だけど確実に美味しいはず。
俺は期待感を持ったまま、まずはフルーツのケーキを口に入れる。
――うっまい! フルーツの質の良いものが使われているのか美味しく、クリームが更に美味しさを引き立てている。
テンションが上がった勢いのまま、チョコのロールケーキも食べてみたが、こちらも格別の美味しさ。
数種類のチョコが使われているのだが、どれも別の美味しさを引き出していて完璧な味。
スポンジケーキも中には甘いチーズのクリームがふんだんに詰まっていて、抜群に美味しい。
最後はあまり期待していなかったパンケーキだけど……予想を裏切り、俺の中ではこのパンケーキが一番美味しかった。
硬そうに見えたパンケーキだったけど、もっちもちのふっわふわ食感。
中には数種類のクリームが入っていて、どこを食べても新鮮で常に美味しさを味わえる完璧なスイーツ。
ジーニアの反応を楽しみにやってきたのに、脇目も振らずに食べてしまったが……。
最高に美味しかったし、これはこのお店のためだけに寄って大正解だったと言わざるを得ないな。
————————————
新作を投稿致しました!
【勇者召喚】に巻き込まれた社畜のおっさんが、チートスキルを使って異世界の田舎でスローライフを送る物語となっています!
スキル名は【異世界農業】。
育てた作物をNP(農業ポイント)と呼ばれる特別なポイントに換えることができ、そのNPでは日本のものや魔物なんかも含め、ほぼ全てのものを購入することができるというスキル。
そんなスキルを使って異世界で農業を行い、様々な人や魔物と交流をしながら快適なほのぼのスローライフを送る――という作品となっております。
ストレスフリーで読める作品だと思いますので、気軽に読んで頂けたら幸いです!
URLは↓
https://kakuyomu.jp/works/16818093087897643745/episodes/16818093087897727808
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます